2014 Fiscal Year Research-status Report
情報社会における旅行者の地域イメージ関与とそのマネジメントをめぐる実態調査研究
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26870748
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Research Institution | Otemae University |
Principal Investigator |
谷村 要 大手前大学, メディア・芸術学部, 講師 (20579528)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | アニメ聖地 / アニメ聖地巡礼者 / CMC研究 / ファンアート / 場所性 / ネットコミュニティ / 流動性 / 地域活性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、アニメ作品の舞台と看做される地域=「アニメ聖地」における旅行者行動および住民意識に関する調査研究を通じて、メディア上で形成される地域イメージが郊外地域の場所性を変容させた過程、およびその後の影響について把握することを目的とする。 研究開始年度である2014年度は、地域住民の「アニメ聖地」化に関する意識とその背景について、聞き取り調査を通じて明らかにすることを試みた。 まず、埼玉県久喜市鷲宮・滋賀県犬上郡豊郷町・千葉県鴨川市・茨城県東茨城郡大洗町で「アニメ聖地」の景観成立および「アニメ聖地」化に対する意識に関する地域住民への聞き取りを実施した。その成果の一部は関西大学法学研究所第118回特別研究会「地域活性化と多様性」において口頭発表するとともに、『ノモス』No.35(2014年12月)に掲載された論文「趣味の包摂が生む地域活性化 : アニメ聖地に見る他者の受け入れから」(pp.35-46)にまとめた。調査からは、観光地としての知名度がなかった地域においても地域外の人びとを受け入れやすい土壌があることやまちおこし当事者の地域イメージへの問題意識が、アニメファンを受け入れた背景にあることがうかがえた。 また、ソーシャルメディアを活用したファンによる情報発信や地域でのファンの活動について、アニメ聖地に訪れるファンのネットコミュニティにおける参与観察を通じた分析を進めている。具体的には2014年7月に開催されたファン主催のイベント(「舞台探訪者サミット」)に司会として参加し、その際にファンの地域への関与に関する意見を探っている。以降も、アニメ聖地巡礼者のコア層に対する聞き取りを進めている。 次年度では同様の課題について他地域も含めた調査研究を進め、そこで得られた知見を分析した報告書を公刊する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2014年度は「アニメ聖地」の景観成立の過程および住民意識について、「アニメ聖地」として知られる複数の地域での住民への聞き取りを通じた調査研究を進めるとともに、その成果の一部を論文としてまとめることができた。また、アニメ聖地巡礼をおこなう当事者(ファン)が自ら主催するイベントに参与観察し、彼らが地域とどのようなかかわり方を模索しているかについての知見を得ることができた。 また、地域の場所性を巡る先行研究の中で、特に本研究課題と関連性の強いものについて選択・精読し、本研究の位置づけや学術的意義を明確にした。
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Strategy for Future Research Activity |
研究調査活動については、大きくは三点ある。第一に、昨年度に行った地域住民への聞き取りをさらに多くの地域で実施し、地域が「アニメ聖地」という外部から付与された場所性に対しどのように向き合っているかについて明らかにしていきたい。第二に、アニメファンのライフヒストリーとその中での「聖地巡礼」行為や地域とのかかわりの位置づけについて、こちらもアニメ聖地巡礼者への聞き取りを中心に調査を進めていく。特に谷村が「リピーター型」と考えるアニメ聖地巡礼者を対象として実施したい。第三に、Web上における聖地巡礼者の情報発信行動についての分析である。特にファンの情報発信とその受容に注目し、彼らの「聖地巡礼」行為にどのようにつながっているのか、分析を進めていきたい。
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Causes of Carryover |
各地域への旅費および調査等における謝礼については他の研究費も活用できたことにより、また、物品費は申請時に購入予定だったテキストマイニングソフトの購入を次年度に見送ったため、未使用額が生じることになった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
データ集計用のソフトウェアなど物品費として20万円、調査対象地域への訪問、学会への参加など旅費として35万円、調査に伴う謝礼および人件費として18万円、文房具などの消耗品費・報告書印刷代として25万円を計画している。
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