2014 Fiscal Year Research-status Report
高効率な有用物質生産能を複合的に有する海洋性珪藻細胞の開発
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26870750
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
中島 健介 関西学院大学, 理工学研究科, 博士研究員 (50709318)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 海洋性珪藻 / 無機炭素獲得 / リン酸獲得 / ポリリン酸蓄積 / 有用物質生産 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、2種のモデル海洋性珪藻を研究対象に珪藻の油脂およびポリリン酸などの有用物質生産の原料物質の獲得機構および有用物質の細胞内蓄積機構を明らかにし、これを基にした複数の有用物質生産能を高次元で有する珪藻細胞を遺伝子改変技術を用いて開発すると共に、有用物質を低コストで生産・供給するための技術基盤を確立することを最終目標としている。 平成26年度は、研究計画に従い、以下に示す4つの実験を遂行し結果を得た。1.葉緑体局在型無機炭素輸送体候補因子の探索および細胞内局在解析を行った。その結果、複数の輸送体候補因子のうちPtSLC4-6およびPtSLC4-7が珪藻の葉緑体4重包膜系に局在していることがGFPとの融合タンパク質発現解析によってわかった。2.リン酸輸送体候補因子の探索とリン酸欠乏環境下における候補遺伝子の発現量解析、および候補因子の細胞内局在解析を行った。その結果、複数のリン酸輸送体候補因子を発見し、そのうち5遺伝子がリン酸欠乏環境下において顕著に誘導されることがわかった。さらに、このうちの2遺伝子の翻訳産物であるPtSLC34-2およびPtSLC34-5は、GFP蛍光観察により、細胞膜局在型タンパク質であることを確認した。3.ポリリン酸合成および分解酵素候補因子の探索、配列決定および珪藻細胞内局在解析用コンストラクトの作製と珪藻の形質転換を行い、複数の形質転換体を得ることに成功した。4.リン酸欠乏環境下における野生型珪藻細胞の生理学的解析を行った。2種のモデル海洋性珪藻は、共にリン酸欠乏環境下に細胞を晒した際、数日で積極的なリン酸取り込み活性を示した。また、これに付随するように細胞外アルカリフォスファターゼ活性の上昇も確認できた。このことから細胞種間でのリン酸欠乏環境下におけるリン酸獲得機構に大きな違いはないことが示唆される結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度の実験計画で予定していたいくつかの葉緑体局在型無機炭素輸送体候補およびリン酸輸送体候補の細胞内局在をすでに明らかにし、遺伝子の発現量解析も終えている。現在、局在解析に用いた形質転換体を無機炭素およびリン酸輸送体候補因子の高発現株として利用し、無機炭素およびリン酸の輸送活性の解析実験に取りかかっていることから、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画通りに遂行する。平成27年度は、細胞内局在解析によって得られた形質転換体を輸送体候補因子過剰発現体として利用し、無機炭素輸送体候補およびリン酸輸送体候補の輸送基質の同定とエフェクター分子の決定を行う。また、ポリリン酸合成および分解酵素候補因子の細胞内局在の決定を終了させ、最終年度に予定している有用物質生産能を複合強化した珪藻細胞の開発に繋げる。
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Causes of Carryover |
研究計画が当初予定した計画よりも進行したため僅かではあるが余剰分が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
余剰分は少額であるため、平成27年度の成果発表に計上する。
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