2014 Fiscal Year Research-status Report
子どもの性的加害行動に対するファーストインターベンションプログラムの開発
Project/Area Number |
26870762
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Research Institution | Kansai University of International Studies |
Principal Investigator |
高岸 幸弘 関西国際大学, 人間科学部, 准教授 (00635170)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 国際情報交換(アメリカ・オハイオ州) / 性加害青年専門治療施設 / 児童福祉施設 / インタビュー調査 / 初期介入 / ストレスマネジメント |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、まず青年の性加害専門治療施設のあるアメリカ・オハイオ州の各施設を訪問し、視察と情報収集を行った。日本の福祉施設にはない高度なハード面の構造化と施設内のルール、さらにそれを裏付ける法制度の整備が確立していることが明かとなった。一方、施設職員との情報交換によって裏付けとなる法的根拠はいまだ議論の渦中にあり、今後も改訂されていく可能性が高いことも分かった。日本でも治療的対応を行うにあたり法整備は必要であろうが、先駆的な取り組みですら議論の余地があることは念頭に進めていく必要があることが明かとなったのは視察で得られたことがらの一つである。また、施設職員から対応現場での詳細な工夫に関する情報を得た。 次に、日本の児童福祉施設での性加害事案の実際を確認し、初期介入のあり方を検討するにあたり、児童養護施設、情緒障害児短期治療施設、児童自立支援施設、合計5施設12名の施設職員のインタビュー調査を実施した。現在インタビューデータを解析し、性加害事案の発生時の介入のあり方の検討を行うために、対応の経験をした職員の実体験からみえてきた情緒体験やストレスの望ましい処理のあり方を明らかにした。研究結果は平成27年度の日本子ども虐待防止学会で発表予定である。最終目標である具体的な介入プログラムを作成するにあたり、現場の実際を明らかにしたことは作成するプログラムが汎用性をもつことにつながるといえる。児童福祉施設の訪問時には、インタビューだけでなく性的加害問題の会議やケースカンファレンスに参加し、具体的な事案の検討と情報交換を行った。より現場に即した情報を得られたことは、理論的なものに偏らない実用的なプログラム作成につながると見込まれた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
性的加害事案の初期介入のあり方を検討するにあたり、先駆的取り組みを行っているアメリカの実際を知ることは、今回の研究プロジェクトの柱の一つとなるものである。まず海外視察を成功裏に終えられたことは、当初の計画に沿った実施である。また、それらを念頭に日本での児童福祉施設の実際をインタビューすることもおおむね計画通りに進行していることがらである。インタビュー調査をもとに全国規模の質問紙調査を実施することはまだ行っていないが、インタビューデータの詳細な解析とともに実施する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
インタビュー調査の結果をもとにした全国規模のアンケート調査を実施する。配布先は、児童養護施設(601施設)、情緒障害児短期治療施設(39施設)、児童自立支援施設(58施設)である。施設の中で性的加害事案の初期対応を直接経験したことのある職員を対象に回答を求め、集計を行う。全国のデータをもとに対応のあり方の傾向を示し、先のインタビュー調査で協力を得た中堅以上の経験を持つ児童福祉施設職員にデルファイ法で調査を行う。そこで得られたコメントをもとにプログラムを修正し、再度デルファイ法でコメントを求め最終的な、ファーストインターベンションプログラムを作成する。
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Causes of Carryover |
本プロジェクトの実施事項の一つである全国規模のアンケート調査の実施が、平成27年度に変更になったため、その分の予算執行がなされなかった。アンケート調査の時期が変更になったのは、調査項目のもととなるインタビューデータの収集が、年度の境目に設定されたためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究プロジェクトの全体的内容に変更はなく、アンケート実施の時期の変更が生じたのみであり、平成27年度前半にはアンケート調査を実施し、生じた年度使用額の差額は解消される見込みである。
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