2015 Fiscal Year Research-status Report
脈波伝播速度と新規血管内皮機能検査、免疫学的手法を用いた革新的脳卒中診療の開発
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26870765
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Research Institution | National Center for Geriatrics and Gerontology |
Principal Investigator |
佐治 直樹 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, もの忘れセンター, 医長 (30624910)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 脳小血管病 / 血管内皮機能障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、脳小血管病(Cerebral small vessel disease)の発症機序解明につながるバイオマーカーの探索や脳血管障害との関連を解析している。 平成27年度は、平成26年度に引き続き脳小血管病に関する先行研究を継続し、その成果を英語論文として発表した(Saji N, et al. J Stroke Cerebrovasc Dis. 2015)。研究会(第13回関西中部認知症研究会)で概要を口頭発表した。 また、先行研究から得られた知見やバイオマーカー測定実験で得られたデータを整理し、その関連を体系化すべく理論構築に努めた。その結果、当該研究のテーマである脈波亢進による脳実質障害のメカニズムは、「津波効果(tsunami effect)」として理論的に可視化できた。そして、バイオマーカー測定実験のデータを整理し、見出された知見を論文化すべく、機序の解明と理論の確立を第一目標にして研究をすすめた。脳小血管病と脈波検査との関連をまとめ、Review論文として出版した(Saji N, et al. Pulse. 2015)。 また、脳小血管病と認知機能障害、特に血管性認知症や老年症候群との関連について既報告を渉猟し、2編の英語論文(Saji N, Ogama N, et al. Geriatr Gerontol Int. 2015; Ogama N, Saji N, et al. Geriatr Gerontol Int. 2015)と2編の和文総説論文(佐治ら. 日本臨牀 認知症と類縁疾患. 2016; 佐治ら. 血圧. 2016)にまとめた。その他、研究成果から得られたアイデアを活かして短報として投稿し、Lancet Neurologyに採択された。 平成28年度は、本研究のまとめとして、体系化した理論を基盤にしてバイオマーカー測定実験から得られた知見を解析し、本研究の主論文を作成する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は、検体収集とELISA実験を遂行した。平成27年度は、実験から得られたデータをまとめ、臨床データとの関連を調査し、その基礎理論を構築した。平成28年度は、これらの成果をふまえて主論文を作成する予定である。 研究者(佐治直樹)は、平成27年度から川崎医科大学脳卒中医学教室から国立研究開発法人国立長寿医療研究センターに移籍しているが、研究テーマ自体は、「脳小血管病と脳血管障害、認知機能障害との関連」という共通した分野である。両施設がそれぞれ脳血管障害と認知機能障害の専門研究施設であることから、研究進展にはむしろ好都合であった。現在も、脳血管障害と認知機能障害の臨床研究を融合した新たなジャンルに挑戦できている。主論文作成までの予定が当初の想定より遅れ、進捗が思わしくないが、本研究から派生した新しい研究アイデアも見出しており、新たな臨床研究の開発や展開が可能になっている。これらを鑑みて、おおむね順調に進展できていると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
バイオマーカー測定実験で得られた高感度CRP、インターロイキン6などの検査値と頭部MRI画像や病態との関連を論文にまとめる。また、脳小血管病の解析に関する前向き観察研究を準備しており、その研究計画に本研究で得られた知見を活用する予定である。
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Causes of Carryover |
物品費、旅費などの余剰分(2369円なので予算作成時の経費算出と研究費の執行段階での誤差の範囲内であると考えている)。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度経費に繰り越し、消耗品などの経費予算に組み入れる。
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