2015 Fiscal Year Research-status Report
神経筋電気刺激療法を用いた透析治療中の新たなリハビリテーションプログラムの開発
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26870800
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Research Institution | Aichi Medical College for Physical and Occupational Therapy |
Principal Investigator |
河野 健一 愛知医療学院短期大学, その他部局等, 講師 (10638480)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 透析治療 / 筋電気刺激療法 / 溶質除去 / 運動能力 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、1つめに昨年度から実施している透析治療中に行う筋電気刺激療法(electric muscle stimulation: EMS)の6ヶ月間の介入が、骨格筋蛋白の同化を促すかどうか、また運動能力を向上させるかどうかを検証した。高齢で虚弱状態にある維持透析患者16名をEMS群8名、コントロール(CON)群8名に割り付け、EMS群には週3回の透析治療中に、低周波電気刺激(週2回、20分、20Hz )と筋力トレーニング(週1回、20分)を併用したリハビリテーションを実施した。その結果、EMS群は、6分間歩行距離(6-minutes walking test, 6MWT)が向上する傾向を認めた(変化量中央値、EMS群15.5m vs CON群-6.5m, p=0.13)。一方で、筋蛋白の同化の指標である血清IGF-1や膝伸展筋力への影響は認めなかった。 2つめに、透析治療中に行うEMSが循環動態と溶質除去に関する透析指標へ及ぼす即時的影響を検証した。維持透析患者6名を対象に、透析条件や曜日を統一したうえで、EMS実施時(EMS群)と非実施時(CON群)の血圧と溶質除去効果を観察した。溶質除去は透析治療前後の尿素窒素(BUN)、クレアチニン、リン、アルブミン、β2ミクログロブリンを血清と透析排液から評価し、さらに尿素除去率(urea reduction rate, URR)と標準化透析量(Kt/V)についても算出した。その結果、透析前後の比較では、血清BUN(p=0.04)と排液BUN(p=0.00)の除去量に対するEMSの主効果を認めた。一方で、URRとKt/Vは、EMS群とCON群の間で統計学的な有意差を認めなかった。血清BUNの透析前値がEMS群において有意に高かったことが、EMS群におけるBUN除去量の増大に少なからず影響したと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書に記載した研究実施計画に対してほぼ同じスケジュールにて成果を出すことができているため、概ね順調に進展していると考えた。ただし、予定よりも症例数が少なくなっている。これは対象者のリクルートにおいて、研究内容に対する同意を得ることが難しいことが理由にあげられる。筋電気刺激療法は腰部や下肢を露出する必要があり、特に女性の研究参加率が著しく低かった。実質的に研究協力施設において、これ以上症例数を増やすことは困難であり現状の症例にて、今後成果の報告を行っていく。
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Strategy for Future Research Activity |
本課題は、透析治療中におこなうEMSの効果検証を中心に行っているが、最終的な目的は、透析患者においてどのような透析治療中に行うリハビリテーションが運動能力と透析時の溶質除去に対して効果をもたらすのかを明らかにし、新たなリハビリテーションプログラムを開発することである。そこで、平成27年度に研究協力施設と研究協力者を新たに増やし、当該施設に出向きながら「有酸素運動」を実施した場合のデータ取得を進め、EMSとの比較を試みるよう準備を進めた。平成28年度は、上記のデータ測定を進めること、測定データを解析しEMSとの効果の比較を検証すること、それらの結果を学会発表ならびに論文としてまとめる作業を進めること、以上の内容を推進する予定である。
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Causes of Carryover |
平成27年度、新たな研究協力施設と研究協力者が加わり、追加データを測定するための費用として、次年度使用額分を前倒し申請した。しかし、当該研究協力施設における倫理審査、測定設備の準備に時間がかかり、27年度中に研究を開始することができなかった。そのため、前倒し申請額と同額の次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
追加データを測定するための研究協力施設の倫理審査は終了し、データ測定をいつでも開始できる環境が整っている。平成27年度に計画した内容を、次年度28年度に逐次履行し使用する計画である。また、当該使用額は、もとももと平成28年度の計画において外国旅費として計上していた費用の一部である。よって、外国出張費ではなく、論文投稿という形で研究成果を発表するよう計画を変更する。
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Research Products
(13 results)