2014 Fiscal Year Research-status Report
空運業におけるアライアンス取引に関する会計処理の実態分析
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26870805
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Research Institution | Kagoshima Prefectural College |
Principal Investigator |
宗田 健一 鹿児島県立短期大学, 商経学科, 准教授 (60413704)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | アライアンス会計 / 航空会社 / リース / コンポーネント・アカウンティング / 収益認識 / スロット / 排出権 / FFP |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,企業集団を超えたアライアンス(企業提携)を組む航空会社の会計実務の実態について調査し解明することである。 近年の航空輸送量の増加,LCCの台頭,航空機事故の多発を受けて,国内外を問わず航空会社の経営や安全性については関心が高まっている。そこで2014年度は,研究期間全体を通じて必要となるであろう基本文献や関連資料等を収集し文献研究を行った上で,研究実施計画で設定した(1)航空機の取得・売却・減価償却・減損,(2)リース,(3)外貨換算について考察を進めた。 まず,航空運送事業における簿記・会計実務の固有性について公表財務諸表等から明らかにし,航空機取引に焦点を絞り考察を行った。次に,多様な航空機の調達スキームのうち,購入形態とリース形態について取引事例・仕訳事例を用いて整理・分類し,現行の簿記・会計実務を明らかにした。折しもスカイマーク社の航空機購入契約解除問題が話題となっていたことから,同社の公表資料を基に契約解除に伴う会計処理についても考察を行っている。 考察の結果,複数の航空会社の事例から実務の類似性と相違性を指摘した。航空機代金の支払いに伴うPDP(Pre-delivery Payments),政府補助金による航空機取得,減価償却時におけるコンポーネント・アカウンティング,多用なリース形態などを航空会社の簿記・会計処理上の特徴として示し,会計基準の相違等に伴う今後の課題についても抽出している。 これらの研究に加えて,航空会社でのヒアリング調査,地方自治体でのインタビュー調査,国内空港の利用状況調査,航空会社の工場見学などを行い,2015年度以降に考察する論点に関して予備調査・研究を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の「研究実績の概要」で示した通り,2014年度は3つの論点,すなわち(1)航空機の取得・売却・減価償却・減損,(2)リース,(3)外貨換算について考察を進める計画を立てた。このうち,(1)と(2)については,すでに学会報告,雑誌等で研究成果の一部を公表した。このことから,おおむね順調に進展していると考えられる。なお(3)の論点については,2015年度に研究成果を公表する予定にしている。 学会報告:「簿記実務研究部会『業種別簿記実務の研究』(最終報告)」(共同報告,2014年8月31日,日本簿記学会第30回全国大会,神戸大学)の一部として,航空機リースに関して報告。 論文掲載①:「空運業の簿記実務 ―航空機リースを中心として―」『業種別簿記実務の研究』(日本簿記学会・簿記実務研究部会<最終報告>),2014年 8月,3-10頁。 論文掲載②:「空運業の簿記・会計実務に関する研究(2) ―航空機の取得,減価償却,売却,リース等を中心として―」『商経論叢』(鹿児島県立短期大学),第65号,2014年10月,1-31頁。 論文掲載③:「離島航空路線維持に関する一考察 -第一航空による那覇―徳之島路線を題材として-」『研究年報』(鹿児島県立短期大学地域研究所)第46号,2015年3月,15-28頁。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は3年計画としていることから,残りの2015~2016年度で当初計画した5論点について考察する予定である。 研究を遂行する上での課題としては,理論を一般化するために用いる資料を十分に収集して整理・分類・保存し,それらを注意深く要約,統合,評価することである。 「木を見て森を見ず」とならないように,研究計画全体を俯瞰しながら今後の研究を推進してく予定であるが,そのために,航空会社の公表する公表財務諸表に加えて,IR資料や商業雑誌を含めて幅広く資料収集を行う予定にしている。 研究を効率的に推進するために,国際統合報告フレームワークに基づく統合報告書を視野に入れて研究を発展させていきたい。これは,残りの5つの論点が非財務情報に関わる内容を包含していることにも関連している。とりわけ,スロット取引と排出権取引に関しては当初の2016年度より前倒しして研究を進めている。
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Causes of Carryover |
当初,印刷・複写費,研究成果発表費用(抜き刷り印刷代:3原稿分)を予定していたが,書籍等を購入することで印刷費が抑えられ,執筆者割り当ての抜き刷りが50冊あり追加の印刷が不要であったこと,また通訳が不要であったことから,約3万円の次年度使用額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初の計画通り,空運業関連書籍・雑誌,消耗品,旅費,印刷・複写費として使用を予定している。 申請者の所属する大学(鹿児島県立短期大学)からの移動は地域的な問題もあり,国内旅費であっても相当額に上ることから,翌年度分として請求した助成金も旅費等に充当することにより,成果の出る研究を進めたいと考えている。
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