2014 Fiscal Year Research-status Report
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26870817
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Research Institution | National Institute of Technology, Kumamoto College |
Principal Investigator |
遠山 隆淑 熊本高等専門学校, 共通教育科(八代キャンパス), 准教授 (60363305)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 妥協(compromise) / 地域社会(community) / 多様性(variety) / ウィッグ(whig) / 選挙制度(elective system) |
Outline of Annual Research Achievements |
①数次の選挙法改正を通じて有権者数が激増した19世紀イギリスの中で、ウィッグが展開した独特の選挙制度論を検討した。J・マッキントッシュやW・バジョットらウィッグは、労働者大衆に対する大幅な選挙権の拡大を主張するラディカルの知識人たちの議論を「数(numbers)」にのみ政治的発言権を認める誤ったものとしてしりぞける。これに対してウィッグは、有権者層の多様な政治的見解を確保するという観点から、各「地域社会(community)」ごとに選挙資格が異なる―それゆえに代表選出の決定要因も異なる―「多様な選挙制度」論を提出した。彼らは、長い時間の中で形成されてきた「地域社会」の歴史的性格を重視する。そうした性格のため、各地域社会は、それぞれに一つの「総体(integrity)」として、その地域のみが有する特殊性を持っている。このような各地域社会特有の見解が表明されるからこそ、イギリスでは多様な世論の表出が実現されてきたがゆえに、第一次選挙法改正(1832年)までに行われていたこの選挙区制度を復活させるべきだと彼らは主張した。 ②多様な政治的見解をまとめ上げていく政治手法としての「妥協」論に関するイギリス政治思想史上の先行研究の調査。フムレスク(2013)が論じているように、妥協概念に関する理論的研究は散見されるものの、思想史の観点からのものはまだない。イギリスにおける政治的妥協の肯定的評価の淵源を「社会契約論」に求めるフムレスクのものも、17世紀までを扱ったものであり、以後の時代についてはラディカルのJ・モーリー『妥協論』(1886)以外は検討されておらず、政治的手法としての妥協を積極的に評価したウィッグの議論については手つかずの状況だということが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度についてはおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
以上の研究成果に加え、今年度は、ウィッグの政治的議論において、政治的妥協が具体的にどのように達成されるのか、に関する彼らの議論をさらに蒐集することによって、世論の多様性を確保するがゆえの政治的妥協の必要性という観点から、ウィッグの妥協論を描き出し、単調にまとめる。
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Causes of Carryover |
研究の進展の中で年度末に必要であることがわかった文献の価格が高額であったため、購入を控えることになってしまったため若干の未使用額が生じてしまった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
「理由」に記入した文献の購入も含めて、計画通りの使用を行う。
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