2014 Fiscal Year Research-status Report
ヒトの子育てと前頭前野発達ーチンパンジー、マカク、マーモセットを実験モデルとして
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26870827
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Research Institution | Central Institute for Experimental Animals |
Principal Investigator |
酒井 朋子 公益財団法人実験動物中央研究所, その他部局等, 研究員 (30640099)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 霊長類 / 脳進化 / 脳発達 / チンパンジー / マーモセット / MRI |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトの知性や行動およびヒト固有の精神・神経疾患の病態メカニズムを理解するうえで、ヒト以外の霊長類との比較を通して、ヒトの脳の進化・発達機構を明らかにすることは必要不可欠である。本研究では、磁気共鳴画像(MRI)法 を用いて、霊長類4種(ヒト、チンパンジー、マカクザル、マーモセット)の乳児期から思春期における前頭前野の脳構造の成長様式を比較することで、ヒト特異的な前頭前野の発達機構の解明を目指す。本年度の計画として、霊長類の発達期の脳画像分析の基盤構築として、(1)マーモセットの3次元脳解剖画像の撮像、(2)霊長類の発達期の標準脳テンプレートの作成法の確立を行った。 (1)マーモセットの3次元脳解剖画像の撮像 7テスラの高磁場MRI装置により、生後1ヶ月から2歳頃(早期乳仔期から成体期に相当)の正常個体マーモセットを対象に、3次元の脳解剖画像を収集した。 (2)霊長類の発達期の標準脳テンプレートの作成法の確立 現在に至るまで、ヒト以外の霊長類の発達期の3次元標準脳テンプレートを構築することが困難であった。この原因として、ヒト以外の霊長類を対象とした発達期の脳画像が非常に少ないと同時に、ヒトの脳構造から大きく変形していることがあげられる。そこで、本研究はJohns Hopkins Universityの森・大石研究室からの研究協力を受け、同大学が開発したLarge Deformation Diffeomorphic Metric Mapping (LDDMM)という画像変形アルゴリズムに展開することで、この方法論的問題を解決した。LDDMMをスーパーコンピュータ上で動作することで、幾何学的連続性を保持したまま、画像の非線形的な重ね合わせや非可逆的な変換ができる。これにより、ヒト以外の霊長類においても、解剖学的区分に基づく標準脳テンプレートを年齢ごとに高精度に構築することが可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までのところ、研究は概ね順調に進んでいる。当初の研究計画通り、マーモセットの3次元脳解剖画像の収集することができた。さらに、Johns Hopkins Universityの森・大石研究室が独自に開発した計算解剖学的手法を展開することで、ヒト以外の霊長類の発達期の3次元標準脳テンプレートの作成法を確立することに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度取り組むべき課題は、これまでに収集したチンパンジーおよびマーモセットの脳解剖画像を基に、平成26年度に確立した計算解剖学的手法により、解剖学的区分に基づく3次元標準脳テンプレートを年齢ごとに構築することである。さらに、先行研究のヒトやマカクザルの脳データと融合することで、霊長類4種(ヒト、チンパンジー、マカクザル、マーモセット)の乳児期から思春期における前頭前野構造の成長様式の比較を行い、ヒト固有の発達様式の特徴を明らかにすることを目指す。そのうえで、この特徴がヒトの前頭前野構造の形成にどのように寄与するのかを定量的・包括的に検証する。
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Causes of Carryover |
平成26年度8月から、申請者の異動により、画像解析を実施する研究機関が、実中研から慶應義塾大学に変更した。これに伴い、当初実中研に設置予定だった画像解析用のパーソナルコンピュターをデスクトップ型からノートブック型に機種変更した。このため、平成26年度の研究費は、このコンピューターの購入費用が余ったかたちとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度から研究代表者の所属機関が実中研から慶應義塾大学に変更するとともに、より本格的な画像解析を実施する予定である。よって、平成27年度に慶應義塾大学に設置する新たなデスクトップ型のパーソナルコンピュターあるいはワークステーションを購入する予定である。
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Research Products
(7 results)
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[Presentation] Developmental patterns of the corpus callosum in common marmosets, chimpanzees, and humans2015
Author(s)
Sakai, T., Komaki, Y., Hata, J., Mikami, A., Matsui, M., Okahara, J., Okahara, N., Inoue, T., Sasaki, E., and Okano, H.
Organizer
The 38nd Annual Meeting of the Japan Neuroscience Society
Place of Presentation
神戸国際会議場(兵庫)
Year and Date
2015-07-30
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