2014 Fiscal Year Research-status Report
代謝理論にもとづいた食物網構造の定量化と野外生態系への応用
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26870832
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
角谷 拓 独立行政法人国立環境研究所, 生物・生態系環境研究センター, 主任研究員 (40451843)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 食物網 / 安定同位体 / 代謝理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、安定同位体データをもとに食物網を構成する消費者に対する餌の貢献比率を一括して推定する手法(IsoWeb)と代謝理論から得られる知見を活用し、食物網内の主要なエネルギー流の簡便な把握を可能にすることを目的とする。本年度は、この目的にそって、推定モデルIsoWebの高度化を行った。具体的には、野外において食物網の捕食-被食関係が完全に把握できない場合においても、構成種の安定同位体データと情報基準をもとに、適切な食物網構造を選択することができるようにIsoWebを拡張した。また、エネルギー食物網の把握手法の検討にもちいるためのデータとして、複数の淡水生態系において取得された食物網データ(構成種の安定同位体比データおよびバイオマス)を整理し、文献情報から得た捕食‐被食関係に関する情報とIsoWebを合わせて、それぞれの淡水生態系の食物網における餌の貢献比率の推定を行った。さらに、代謝理論にもとづいたパラメータ値を用いて仮想的な食物網を多数構成し、食物網全体のエネルギー流を強く規定する、食う‐食われる関係が、全体の食物網構造のとの関係でどのような場所に現れやすいかを検証するための解析を進めた。次年度以降は、これらのデータおよび解析結果を用いて、餌の貢献比率に応じたバイオマス分配をもとに得られる定量的な食物網構造に関する情報が、食物網の中で、全体のエネルギー流を規定したり、安定性に影響したりするのに重要な役割をはたす部分を特定できるかどうかを検証する計画である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
手法開発およびその検証のための野外データの収集整理ともに、予定通り進展している。また、研究成果の公表・発表も順調に行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は、これまでに行った解析手法の拡張、収集・整理したデータおよびシミュレーションを用いた食物網解析結果を総合的に用いて、餌の貢献比率に応じたバイオマス分配をもとに得られる定量的な食物網構造に関する情報が、食物網の中で、全体のエネルギー流を規定したり、安定性に影響したりするのに重要な役割をはたす部分を特定できるかどうかを検証する計画である。
当初の計画では、代謝理論をもとに消費者の体サイズデータのみからバイオマス量を理論的に推定し、エネルギー食物網の推定に用いる計画にしていた。しかし検討の結果、この方法では食物網推定に必要とされる精度でバイオマス情報を得ることが困難なことが判明した。そこで、今後の計画ではバイオマスの実測情報を用いる手法とすることにした。またそれと同時に、より簡便な定量化手法の実現を目指して、安定同位体比データなどから食物網構成種のバイオマスを推定するための手法の検討も実施する計画である。
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Causes of Carryover |
データ解析の手法を変更したため、その分析を優先し、当初予定していた研究打ち合わせを次年度以降に実施することとした。そのための旅費を今年度使用しなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
これまでの計画に加えて、前年度延期した研究打ち合わせを実施する。
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