2014 Fiscal Year Research-status Report
宇和海沿岸段畑地域における近世以降の人間活動と植生景観変容の関係
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26870835
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Research Institution | National Institute for Agro-Environmental Sciences |
Principal Investigator |
徳岡 良則 独立行政法人農業環境技術研究所, その他部局等, 研究員 (20442725)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 段畑 / 耕作放棄 / 植生遷移 / 石垣 / 農地境界 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では国内で比較的早期に耕作放棄が始まった宇和海沿岸の段畑地域を対象に、人間活動とそれに伴う植生景観の変容の関係をで明らかにすることを目的としている。今年度は、宇和海沿岸域の植生調査や過去の資源利用に関する聞き取り調査を実施した。また空中写真や既存GISデータを用いた土地利用図の作成を開始した。 先行して植生解析を進めていた由良半島の山地植生の解析からは、複数の照葉樹林構成種を含む二次林が広く放棄段畑に成立し、石垣化された段畑ではシダ植物が特徴的に多く観察された。また由良半島内で不均一な分布傾向を示したアオギリについて豊後水道沿岸域の各漁村周辺で聞き取り調査や林分調査を実施した結果、複数の漁村で共通して過去には本種から繊維を採取し、漁具や日用品の作成素材として利用していた実態が明らかとなった。今後、宇和海沿岸全域の多様な農業景観を対象に山地利用の歴史と現存植生の関係を検証していきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
植生調査や過去の資源利用に関する聞き取り調査は順調に進められた。空中写真や既存GISデータを用いた土地利用図の作成に少し遅れが生じている。過去の統計資料類の整理後のGISデータへの変換に向け字や過去の町村レベルの地名との対応確認を進めている。これらデータを照合して、農業形態や集落の人口密度の経時的な変化を把握する事で異なる植生景観の変容パターンの解析対象を絞り込む必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
過去の土地利用や環境傾度等を考慮して代表的な芋麦自給栽培地域や柑橘栽培地域、その中間的農業形態の地域などを複数選定する。また人口統計も合わせて照合した上で、異なる植生景観を抽出する。調査対象地域の耕作放棄地を含む地域植生の現況や樹林化の程度を調査し、地域間比較を行う。調査では植物社会学的方法に基づく林分調査や相観植生図を作成、分析し、植生景観変容に強く作用する要因の特定を試みる。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由として研究図書の購入が予定より若干少なかったことがあげられる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
これらの金額と次年度以降に請求する研究費を合わせた使用計画として研究図書の購入を一部増やすことを計画している。
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