2014 Fiscal Year Research-status Report
血清型変換株作出による豚レンサ球菌の抗原性変換発生機序の解明
| Project/Area Number |
26870840
|
|---|
| Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
|---|
Principal Investigator |
大倉 正稔 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 動物衛生研究所 細菌・寄生虫研究領域, 研究員 (60508315)
|
|---|
| Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
| Keywords | 細菌学 / レンサ球菌 / 抗原性変換 |
|---|
| Outline of Annual Research Achievements |
豚レンサ球菌（S. suis）は、豚を自然宿主とする人獣共通感染症起因菌であり、菌体表層の莢膜の抗原性により30以上の血清型に分類されている。本菌の莢膜合成に関わる遺伝子はクラスター（cps gene cluster）を形成することが明らかになっており、その交換により異なる血清型に変換しうることが強く示唆されている。したがって、血清型変換による既存のワクチンでは防御効果のない新たな血清型の台頭が懸念されている。しかし、未だ変換の現象は実証されておらず、その機序は全く分かっていない。そこで本研究では、今後の予防対策立案に役立つ知見を得ることを目的にS. suisの抗原性（血清型）変換が実際に起こる得ることをin vitroの実験により証明し、in vivoにおけるその発生機序を明らかにすること目指している。
当該年度は、「可動遺伝因子ICEを介したcps gene clusterの供与側株からの環状切り出しおよび伝達による抗原性変換」及び「受容側株の自然形質転換による抗原性変換」をin vitroの実験により検証した。cps gene cluster近傍のICEは、通常の培養でもゲノムから環状に切り出されることを複数株で確認したが、cps gene clusterを含めた切り出しについては確認できなかった。一方、受容側株の自然形質転換による抗原性変換については、S. suisには自然形質転換能を有する株と欠失する株が存在し、有する株については株により自然形質転換を誘導するペプチドが異なり、少なくとも３タイプあることを明らかにした。さらに、異なる血清型株のゲノムDNAと自然形質転換誘導ペプチド添加により、自然形質転換能を有する株では血清型変換株が複数の株で得られた。
当該年度の研究により、「in vitroにおけるS. suisの抗原性（血清型）変換」を実証した。
|
| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画では、当該年度と次年度により「可動遺伝因子ICEを介したcps gene clusterの供与側株からの環状切り出しおよび伝達」及び「受容側株の自然形質転換」により「in vitroにおけるS. suisの抗原性（血清型）変換」を実証することを予定している。
当該年度は前者については検証すべき点が残されているが、後者については実証できた。以上から、２年間の計画の中で、片方について達成したという点から順調に進展していると考えている。
|
| Strategy for Future Research Activity |
次年度は、「可動遺伝因子ICEを介したcps gene clusterの供与側株からの環状切り出しおよび伝達」の検証及び最終年度に実施予定の「in vivoにおける抗原性変換発生機序の解明」を想定したデータ収集を予定している。
具体的には、上記の切り出し現象が起こった場合、表現型として供与側株の莢膜が欠失すると予想される。莢膜の欠失は環境や宿主内のストレスへの抵抗が下がり、菌にとって不利に働くことが予想されるため、通常の培養条件では起こりにくいと考えられる。そこで、莢膜の欠失が有利に働く条件（血清型特異的に感染するファージや特定血清型株の感染血清の添加など）を探し、切り出し現象を検証する。
さらに、環境や宿主内のストレスへの抵抗の低下は自然形質転換能を高めることが知られており、S. suisでは無莢膜株が心内膜炎病巣などから多く分離されることが知られている。このことは一部の株が感染の過程で莢膜を欠失しうることを示唆しており、研究代表者らは莢膜欠失が抗原性変換においても重要な過程であると仮説を立て、様々な莢膜欠失株を作出し、抗原性変換効率が変化するかを検証する予定である。
|
