2014 Fiscal Year Research-status Report
利己的な多主体による相互承認によって形成されるネットワークのモデル化
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26870856
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
今井 哲郎 独立行政法人理化学研究所, 計算科学研究機構, 特別研究員 (10436173)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 複雑ネットワーク科学 / ネットワーク形成ゲーム |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は,動学的ネットワーク形成ゲームによる2,000ノード規模のネットワーク形成のシミュレーションを,様々なシミュレーションパラメータに対して大規模並列計算技術を用いて実施した.2,000ノード規模のネットワーク形成のシミュレーションは,当初の研究計画であり実際の実際のAS間ネットワークと比較すると約1/10の規模であるものの,これまでに実行可能であった数百ノードと比較すると約10倍程度の大きな規模のネットワーク規模である. これを実現するに当たり,以下の3つを実施した.第1に,本モデルのシミュレーションを北海道大学情報基盤センターの大型計算機システムSR16000/M1上での1,024プロセスの大規模並列プログラムとして実装することで,大幅なシミュレーションの高速化が実現された.第2に,幅優先探索のアルゴリズムの導入により,計算量の削減を行った.本モデルのシミュレーションにおいては,各タイムステップのネットワークトポロジの評価にこれまで用いていたDijkstraアルゴリズムに代わって幅優先アルゴリズムを用いれば良いことが分かっていた.そのため平成26年度では,本モデルのシミュレーションプログラムに,幅優先探索アルゴリズムの実装として高速なグラフ探索のためのC++ライブラリであるLEMON(Library for Efficient Modeling and Optimization in Networks)を導入し,計算量の大幅な削減を行った.第3に,理化学研究所計算科学研究機構で開発されている,様々な計算資源でシミュレーション群を効率良く実行し結果を管理できるフレームワークであるOACISを用い,シミュレーションの実行管理を行った.これにより非常に大きな数のシミュレーションの実行および結果の管理を効率的に行うことができた. また研究発表成果として,1件の国際会議発表,2件の国内研究会発表を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画にあるように,本研究課題の取り組みに当たって,「『京』を含むHPCIシステム共用計算資源の利用研究課題(若手人材育成課題枠)」へ応募した.その結果,「京」の利用課題としては採択されなかったものの,代替資源である北海道大学情報基盤センター大型計算機システムを利用した利用課題として採択された(平成26年度HPCI利用研究課題:一般利用区分(「京」を除くHPCIシステム一般利用)「利己的な多数の主体によって形成される大規模複雑ネットワーク形成」).これにより,北海道大学情報基盤センターの大型計算機システムSR16000/M1の計算資源416,667ノード時間が割り当てられることとなったが,当初予定していた「京」を利用した大規模ネットワーク形成シミュレーションよりも小さい規模(ノード規模で2,000ノード)でのシミュレーションに留まることとなった.また,ネットワーク形成のシミュレーションの実施においても,「京」とはアーキテクチャやコンパイラなどが異なるため,プログラムやライブラリの変更,仮実験などの追加の前処理が必要となった.このことにより,本研究課題は平成26年度末時点において,重みなしグラフ上の最短経路を求めるアルゴリズムを用いたネットワーク形成のシミュレーションの実行を行うに留まり,当初予定していた実ネットワークとの詳細比較までには至らなかった.
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度では,まず第1に平成26年度で未達であった実ASネットワークとの詳細比較を行う.このためにはシミュレーションによって形成された数多くのネットワークの時系列変化のデータを分析する必要があるが,平成27年度はSNAP(Stanford Network Analysis Project)の成果物であるSNAPライブラリを用いて,この分析の効率化を試みる.この分析には前年度に用いたほどの大規模計算資源は必要ではないものの,ある程度の規模の並列計算資源が必要であることから,設備備品費で計上している並列計算が可能な並列計算用PCサーバを購入する. また第2に,当初の研究計画における今年度の実施項目である,実ネットワークとの詳細な比較に基づいたモデルの更なる精緻化を行う.このために,引き続き上述のOACISを用いてシミュレーション群の実行管理を行い,更なる分析の効率化を図る.
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Causes of Carryover |
本研究課題を実施するに当たり別途申請していた「『京』を含むHPCIシステム共用計算資源の利用研究課題」に採択された(平成26年度HPCI利用研究課題:一般利用区分(「京」を除くHPCIシステム一般利用)「利己的な多数の主体によって形成される大規模複雑ネットワーク形成」)ため,北海道大学情報報基盤センター大型計算機システム利用負担費が不要となったこと,またそれに伴い並列計算用PCサーバの購入を平成27年度に回すことになり,その購入費用を平成27年度に繰り越すことになったことによる.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度に購入する並列計算用PCサーバの性能を計画よりも高性能のものにする.また積極的な国際会議への参加を行い,国際的研究連携を深める.
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