2014 Fiscal Year Research-status Report
ブルキナファソ農村部での協働による住民参加型母子保健プログラム開発と評価
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26870870
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Research Institution | National Institute of Public Health |
Principal Investigator |
堀井 聡子 国立保健医療科学院, 国際協力研究部, 主任研究官 (70617422)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 国際研究者交流(ブルキナファソ) / 女性健康 / 地域基盤型住民参加型研究(CBPR) / 協働 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ブルキナファソ国(以下、ブ国)における地域ベースの「女性健康向上プログラム」の開発とその介入効果のプロセス評価を目的に、現地の保健医療従事者と協働で地域参加型研究(community based participatory research, CBPR) を実施するものである。 平成26年度は、CBPRの一手法であるPhoto Voiceを用いて、ブ国の一農村Aにおいて女性の主観的健康観の探索とその寄与要因を探索する質的帰納的研究を実施した。その結果、女性およびその子どもの健康に寄与する一因として、女性たちが自らのイニシアティブで設置した金融講の存在が確認された。金融講が母子の健康に寄与するメカニズムは、傷病時の金銭の貸借等を含む物質的支援、家族計画や健康行動に関する情報の授受等を含む情報的支援、楽しみを共有する等の情緒的支援からなる相互支援が、金融講のメンバー間に醸成されることであった。この結果から、当初「女性健康向上プログラム」として、看護学校に併設される「まちの保健室」を基盤とした行動変容プログラムの立案を検討していたが、金融講など伝統的に築かれてきた相互支援を基盤に母子保健の向上を目指すことが有効であると考えられた。よって、平成27年度は、量的研究を用いて、調査対象村以外のブ国農村部における女性が金融講に参加することで得られる相互支援の機能を記述し、金融講による相互支援と母子の健康との関連について検討することで、「女性健康向上プログラム」モデルを開発することとし、研究計画書を作成した。 また、Photo Voiceを実施した農村Aでは、住民参加型ワークショップを開催し「相互支援を基盤とした母子保健向上プログラム」を策定した。具体的には、金融講を基盤とした養鶏(養鶏技術訓練を含む)、健康教育、啓発集会等からなる包括的な地域ケアシステム構築プログラムであり、現在、現地の協働研究者によってその効果のモニタリングを実施している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初より、本研究の研究デザイン(CBPR)の特性上、現地スタッフや女性のニーズによってそのプロセスや内容に変更が生じることが想定されていたが、質的帰納的研究の結果、ブ国農村部の女性のニーズ、地域の強みが明らかになったため、プログラムの内容を変更した。また、一般化可能なエビデンスに基づくプログラム策定に向け、質的帰納的調査の対象村以外の農村部においても量的研究を実施することにした。同量的研究から開発される女性健康向上プログラムモデルは、当初の計画通り、平成27年度中に策定される予定である。一方、プログラム策定のためのワークショップは一か村のみで実施し、その経過は、質的調査によってモニタリングするなどの一部計画変更を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
文献レビューをもとに金融講の持つ相互支援の機能を分析し、ブ国農村部で実施したPhotoVoiceを用いた質的記述的研究の結果を統合し概念化した仮説モデル「ブ国農村部における金融講を通じた相互支援と母子の健康との関連」に基づき、量的横断的研究を行い、統計的手法を用いて関連を検討する。現地調査では、ブ国T保健区内の金融講のある農村に暮らす25から45歳の女性に対し、現地の看護学生の協力を得て、質問紙を用いた構造化インタビューを実施する。研究対象はT保健区内の115村から20村をランダムに抽出、各村で女性人口の20%を雪だるま式とランダムサンプリングを組み合わせて抽出し、総数500人とする。分析は、「金融講の加盟状況」と「相互支援」の関連、「相互支援」と「母子の健康」の関連についてそれぞれ重回帰分析を行い、仮説モデルの概念間の関連について共分散構造分析を行う。このうち、「母子の健康」は5歳未満児死亡と望まない妊娠等で測定する。
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Causes of Carryover |
当初予定していた4か村程度でのワークショップ開催に代わり、1か村でのワークショップ開催と20か村におけるアンケート調査(量的調査)を行うことになったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成26年度に予定していたワークショップ分の予算を用い、平成27年度にアンケート調査を実施する。
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Research Products
(1 results)