2014 Fiscal Year Research-status Report
大細胞神経内分泌肺癌の標的遺伝子解析による新しい治療法の探索
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26870876
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Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
梅村 茂樹 独立行政法人国立がん研究センター, 東病院, 医員 (80623967)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 分子標的治療 / がん遺伝子 / 大細胞神経内分泌肺癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. 対象症例の臨床因子の抽出 国立がん研究センター東病院、肺癌データベース(肺癌全体 約14000例)の中から、肺切除術が行われていて、術後病理診断が大細胞神経内分泌肺癌(LCNEC)であった症例を抽出したところ、65例が抽出された。これら65例につき、年齢、性別、喫煙指数、病理病期、腫瘍マーカー、再発の有無、生命予後等の臨床因子を抽出した。更にHE標本を再度レビューして、形態学的にLCNECの特徴を有していることも確認した。このうち51例に関して、遺伝子変異に伴う関連タンパク発現の変化を検証するためにTissue microarrayを作成し、10個の受容体チロシンキナーゼ蛋白の免疫染色を行った。この結果、受容体チロシンキナーゼ蛋白の、症例毎に異なる発現パターンが明らかとなった。 2. ゲノムDNAの抽出と標的遺伝子のエクソン解析 LCNECと同様に神経内分泌学的性格を有する、小細胞肺がん切除検体の網羅的遺伝子解析の結果、細胞増殖(疾患の発生)に関連が深いと考えられた候補遺伝子群(約245遺伝子)を選出し、標的遺伝子をターゲットとしたカスタムパネル(約 1.5Mb)を作成した。1.で対象としたLCNEC切除例65例において、ホルマリン固定もしくはメタノール固定のパラフィン包埋病理組織標本のブロックからゲノムDNAを抽出し、上述のカスタムパネルを用いた標的遺伝子のエクソン解析を行い、候補遺伝子群の頻度と変異部位を確認した。この結果、小細胞肺がんと同様に、がん抑制遺伝子:TP53、RB1遺伝子に高頻度に変異を認めた。一方、PI3K/AKT/mTORパスウェイを構成する9遺伝子に変異を認めたのは、19例(29%)であった。またKRAS、HRAS、KITに、それぞれ3例(4%)、1例(1%)、1例(1%)の既知の活性型変異を認めた。更に、シークエンスのリード数を基に、遺伝子増幅の解析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた平成26年度の研究実施計画の中で、まず大細胞神経内分泌肺癌(LCNEC)切除例65例の臨床因子を抽出し、51例で受容体チロシンキナーゼ蛋白の免疫染色を行った。またLCNEC切除例65例全例で、約245遺伝子をターゲットとした標的遺伝子解析を行うことができ、候補遺伝子群の頻度と変異部位の確認を行うことができた。これによりLCNEC切除例における候補遺伝子変異の全体像をつかむことができ、小細胞肺がんとの変異頻度の比較を行うこともできたため、研究計画はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 進行例での確認 国立がん研究センター東病院、肺癌データベースの中から、生検によりLCNEC もしくは高悪性度神経内分泌癌(HGNEC)-probable LCNEC との診断が得られた進行例を抽出する。その中から比較的十分な量の組織が得られている10-20 例を選択しDNA の抽出を行う。この進行例10-20 例に関しても、小細胞肺がんの網羅的解析の結果得られた245 遺伝子により作成したカスタムパネルを用いて標的遺伝子のエクソン解析を行い、進行例の生検標本での標的遺伝子の変異頻度を確認する。 2. 機能解析 上記で検出された遺伝子群について、症例間での重複、遺伝子産物の機能等を加味した二次集計による特徴づけを行う。遺伝子変異(標的遺伝子のエクソン解析)、遺伝子増幅が見られた遺伝子を統合的に収集し、既知の細胞内シグナル経路へのマッピングや、遺伝子産物のもつ機能ドメインによる分類を行い、LCNEC(HGNEC-probable LCNEC を含む)で重複して異常が検出される遺伝子群の同定を行う。この中から、細胞増殖(疾患の発生)に関与すると考えられる遺伝子変異を中心に、治療標的となり得る新しいドライバー遺伝子変異候補の同定を行う。
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