2014 Fiscal Year Research-status Report
「測定の不確かさ」の情報がある場合の試験所間比較における統計的方法
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26870899
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
城野 克広 独立行政法人産業技術総合研究所, 計測標準研究部門, 主任研究員 (60509800)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | En数 / 技能試験 / 測定の不確かさ / モデル選択 |
Outline of Annual Research Achievements |
試験所(測定者)の測定能力を確かめるのに、複数の試験所で、同一の測定対象物を測定した結果を比較することで行われる「技能試験」は有用である。不確かさの妥当な見積もりを含めた測定能力の評価を、参照となる試験所との比較により実施することはよく行われているが、参照試験所がない場合、そのような評価は困難であった。本研究では、このような参照試験所がない場合に、参加者の測定能力を評価するための理論的な基礎を確立した。 その統計学的な課題は外れ値の影響に頑健な方法を確立することにある。この課題に対して、報告された測定の標準不確かさ(測定値の標準偏差にあたる)に加えて、付加的な不確かさを考慮し、その大きさの推定をベイズ統計の推定対象とみなした。事前分布を周辺尤度の最大化に基づいて定める経験ベイズの手法を適用することにより、ほとんどのケースで外れ値に頑健な推定ができた。さらに、推定された値を用いて、簡単に試験所の測定能力を評価する統計的方法を開発した。 ただし、いくつかのケースでは、不自然に思える推定結果が見られた。これは、例えば測定対象物が不均質であるとか、不安定であるという試験所の測定能力以外の原因で、測定値がばらついているときである。このようなことが起きていないかどうかを、モデル選択の問題と捉えて解析することにより、定量的に検討することを可能とした。 今後は、この2つのケースをうまく組み合わせ、総合的かつ簡易な測定能力の評価アルゴリズムを提案することが課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度には、「(1)モデル選択による試験所間比較プロトコルの妥当性評価」、「(2)個々の試験所の技能の統計的評価」について、理論的な問題点を整理し、予備的なデータを得ることを目標としていた。(1)についての具体的なアイディアと数値計算アルゴリズムを発展させ、その内容を国際会議にて発表した。同じく(2)について、その基本的なアイディアを論文として投稿し、査読付きの図書の一編として採択された。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的には、「(1)モデル選択による試験所間比較プロトコルの妥当性評価」、「(2)個々の試験所の技能の統計的評価」、「(3)効率的なアルゴリズムと実用的ソフトウェアの開発」の3つがある。(1)と(2)については、それぞれその基本的なアイディアを具体化させることができた。しかし、それぞれが深く関連してはいるが独立した内容になっており、一貫した理論に基づいたものになっていない。最終年度である本年には、(1)と(2)の間を埋める論理を明確にし、その上で簡易に数値計算ができるアルゴリズムの開発を実施する予定である。
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Causes of Carryover |
162,864円は契約済であり、英文校閲の十分なクオリティを確保することを優先し、締切を次年度とした。残額(109,380円)で解析用PCの購入を検討していたが、旅費や論文の作成に必要な予算を優先させた結果、残予算で十分な性能のPCを購入するのは難しい状況になったため、これを次年度使用とした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の予算と合わせて、解析用のPCの購入を検討する。
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