2014 Fiscal Year Research-status Report
脳機能イメージング法によるヒト脳内奥行き情報処理機構の解明とその応用
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26870911
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Research Institution | National Institute of Information and Communications Technology |
Principal Investigator |
番 浩志 独立行政法人情報通信研究機構, 脳情報通信融合研究センター脳情報通信融合研究室, 研究員 (00467391)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | fMRI / 3D知覚 / 物体知覚 / 物体認知 / 実験心理学 / 脳機能イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
2014年度は、イギリスのケンブリッジ大学およびバーミンガム大学などの研究者と共同で、3D奥行き視を実現するヒト脳内情報処理機構を明らかにするための心理物理学・fMRI研究を行った。具体的には、
1. 物体表面の補完が、3D構造を知覚する前後、どの段階で起きるのかを調べる心理物理学研究を行った。結果、ヒトが物体表面を知覚する前にその物体の3D構造が再構成されていることが明らかになった。本研究はVision Research誌に発表済みである。 2. 物体の質感(光沢やざらつき)知覚に3D視がどのような影響を及ぼすかを調べるヒトfMRI実験を行った。結果、ヒトが質感を知覚する際に特に重要な数個の視覚野の同定に成功し、それらの間の階層的な処理の流れを可視化できた。研究成果は2つの論文にまとめられ、1つの実験はすでにVision Research誌に発表済みである。もう1つの実験は現在投稿に向けて論文の最終校正段階にある。 3. 超高磁場MRI装置(7T MRI)を用いて、両眼視差からの3D知覚に特に重要とされるヒト背側視覚野V3A/V3Bの詳細な組織化の様子を可視化する実験を行った。結果、V3A/V3Bでは両眼視差選択性ニューロンがクラスター構造を成していることをつきとめた。研究成果はJournal of Neuroscience誌に発表済みである。 4. ローカルな両眼視差情報がどのようにグローバルな物体表面へと変換されるのか、その過程を調べるfMRI実験とニューラルシミュレーション実験を行った。結果、V1からV3Aにかけて、物体の3D表面が再構成されていく様子を捉えることに成功した。成果は現在Journal of Neuroscience誌へのアクセプトへ向けてリバイス中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2014年~現在までにかけて、本科研費により補助を受けて3本の論文を国際誌に発表することができた。さらに、すでに3本の論文を近いうちに国際誌へ投稿できる段階にある。これに加え、これまでの研究成果をレビューする日本語の解説論文を執筆する機会にも恵まれた。 本研究申請課題の最終目標である「3D脳活動の工学的な応用」はまだ手つかずの状態ではあるが、その実現に向けて、基礎的なデータの蓄積は進んでいる。これらの状況を総合的にみて、研究課題は当初の目的通り順調に進展しているといえるだろう。
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Strategy for Future Research Activity |
[研究実績の概要]で述べた研究に加え、2014~2015年度は、物体が床面へ落とす影がヒトの奥行き知覚に与える影響を調べる心理行動実験およびfMRI実験を行っている。現在、取得したデータを解析中で、2015年度の早い時期に神経科学の国際誌に投稿する予定である。この研究は、陰影などの絵画的な手掛かりを有効に活用し、物体の運動軌道の情報を3次元空間で正確にトラッキングするマシンビジョンなどの開発に向けた基礎知見としても役立つと考えられ、神経科学のみならず、工学・情報学的にも重要なものである。
また、2015年度は、これまでに蓄積した3D奥行き視の研究をさらに進め、fMRIデータのエンコーディング・モデリング手法(Nishimoto et al., Current Biology 2012など)を応用することで、写真(2次元画像)を観察中のヒトの脳活動から写真に含まれる3次元構造を復元する技術の開発を進める予定である。
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Causes of Carryover |
購入予定だった3D視用のステレオ・メガネの調達がスムーズに進まず、また最新版の発売も予定されていたため、今後の研究を考えた上で、3D視用のメガネの購入を見送った。このため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2014年度に購入を見送った3D視用のステレオ・メガネの購入に充てる予定である。
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[Journal Article] Ultra-high field fMRI reveals systematic functional organization for binocular disparity in human visual cortex.2015
Author(s)
Goncalves, N. R., Ban, H., Sanchez-Panchuel, R. M., Francis, S., Schluppeck, D., Welchman, A. E.
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Journal Title
The Journal of Neuroscience
Volume: 35
Pages: 3056-3072
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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