2014 Fiscal Year Research-status Report
神経変性疾患におけるシナプスのミトコンドリアタンパク質低下の新規メカニズムの解明
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26870921
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Research Institution | National Center for Geriatrics and Gerontology |
Principal Investigator |
関谷 倫子 独立行政法人国立長寿医療研究センター, アルツハイマー病研究部, 流動研究員 (40367412)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | アルツハイマー病 / ミトコンドリア / ショウジョウバエ |
Outline of Annual Research Achievements |
シナプスでのミトコンドリア機能障害は,アルツハイマー病(AD)を含む多くの神経変性疾患において,神経失調・変性の引き金になると考えられている。本研究では,ADモデルショウジョウバエのミトコンドリで初期に認められる,ミトコンドリアタンパク質の減少に着目し,その原因とメカニズムの解明を目的とする。本年度は,ADモデルショウジョウバエの神経細胞体で観察される,凝集体様mito-GFPの形成とシナプスのミトコンドリアタンパク質の減少との関連について検討を行った。 1.タンパク質の折りたたみ,ミトコンドリアへの移行には分子シャペロンが重要な働きをしているが,そのなかでもミトコンドリアに局在するシャペロンタンパク質としてhsp22がある。Hsp22は,ADモデルショウジョウバエで発現の増加が認められ,その過剰発現はmito-GFPを共発現したショウジョウバエの神経細胞体に,凝集体様mito-GFPを形成した。そこで,Hsp22のノックダウンがADモデルショウジョウバエにおいて凝集体様mito-GFPの形成を阻害するかどうか検討を行ったが,Hsp22のみのノックダウンでは,ADモデルにおける凝集体様mito-GFPの形成を阻害出来なかった。またADモデルで認められるミトコンドリアタンパク質の減少にも影響を与えなかった。 2.ADモデルショウジョウバエの神経細胞内ではオートファジーの亢進が認められることから,オートファジーの亢進がミトコンドリアタンパク質の低下の原因であるかどうかを検証するため,オートファゴソーム形成に関わるAtg1,Atg5を過剰発現,あるいはノックダウンし,その影響を検討した。オートファジーの亢進は,ショウジョウバエの発生段階に影響を与え,ミトコンドリアタンパク質の変化を観察することは出来なかった。一方,オートファジー阻害は,それのみでシナプスのmito-GFPのシグナルを増加させる傾向が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度に計画していた,“オートファジーの亢進がミトコンドリアタンパク質の低下の原因かどうかの検証”については,オートファジーの亢進がショウジョウバエの発生段階に影響を与えたため,結果を得る事が出来なかった。そこで,これらについては,薬剤による発現調節を導入し,成虫期にオートファジーを亢進する方法で再検討を行うために,現在トランスジェニックショウジョウバエを作成している。オートファジーの阻害については,順調に実験を行い,ADモデルショウジョウバエでのオートファジーの阻害についても現在検討を行っている。 一方,平成27年度に予定していた,Hsp22ノックダウンショウジョウバエを用いた検討は,Hsp22RNAi系統のショウジョウバエを入手することが出来たため,平成26年度に先行して実験を行う事ができた。残念ながら,実験結果は仮説とは一致しなかったが,今後はさらにその他のシャペロン分子についても検討を進めようと考えている。 また,細胞体で形成される凝集体様mito-GFPの局在については,ショウジョウバエ脳のホールマウント多重免疫染色法にて検討する予定であったが,予備検討段階でミトコンドリアタンパク質の免疫染色が難しいことが判明した。そこで,ショウジョウバエ成虫の脳ホールマウントから,より免疫染色を行いやすいと考えられるショウジョウバエlarvaeを用いた方法に変更することとした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は,26年度に計画していた,“オートファジーの亢進がミトコンドリアタンパク質の低下の原因かどうかの検証”について再度方法を変更して検討を行うと共に,細胞体で観察される凝集体様mito-GFPの局在,ミトコンドリアタンパク質減少との関係を解明する。 1.オートファジーの亢進がミトコンドリアタンパク質低下の原因かどうか オートファジーは,ショウジョウバエの発生段階に影響を与えるため,成虫期に薬剤誘導にてオートファジーの亢進・阻害を行う。現在作成しているトランスジェニックショウジョウバエの薬剤誘導性を確認後に,オートファジーの亢進で,ADモデルと同様の表現系が再現されるかどうか,またADモデルにおいてオートファジーの阻害が,ミトコンドリアタンパク質の減少を抑制するかどうか検証する。 2.凝集体様mito-GFPの局在 まず,末梢神経のDaニューロンにアミロイドβ42とmito-GFPを共発現し,幼虫期の神経細胞体でADモデルショウジョウバエで観察される凝集体様mito-GFPが同様に形成されるかどうかを確認する。その後,同実験系にて多重免疫染色を行い,凝集体様mito-GFPの局在を同定する。
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Causes of Carryover |
当初予定していた,オートファジーに関する研究,およびショウジョウバエ脳のホールマウント多重免疫染色の検討について,実験方法の変更を行う必要が生じたため,当初使用する予定の研究費の一部を次年度に使用する必要が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初予定していた平成27年度の使用計画に加え,H26年度から継続するオートファジーに関する研究,およびショウジョウバエのミトコンドリア・ミトコンドリアタンパク質多重免疫染色に使用する消耗品,研究備品の購入に次年度使用額を使用する予定である。
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