2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26870928
|
Research Institution | Nara National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
山崎 健 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 埋蔵文化財センター, 研究員 (50510814)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 古代 / 考古学 / 食生活 |
Outline of Annual Research Achievements |
古代の食生活に関する基礎資料を収集するとともに、遺跡出土資料の分析を進めた。予想を超える成果として、御食国と考えられている若狭国の研究があげられる。製塩遺跡として著名な浜禰遺跡を事例として、律令制以前における海産物の貢進形態やその歴史的変遷を検討し、以下の点を明らかにした。
・4世紀後半~5世紀頃、若狭において最初に土器製塩技術が導入された浜禰遺跡では、製塩活動だけではなく、遺跡周辺の岩礁域を中心として多種多様な貝類採集活動をおこなっていた。 ・5世紀後葉~6世紀前葉は、貝層規模が増大するとともに、貝種がサザエ・イガイ・アワビに集中するようになり、「自家消費的な貝類採集活動」から「供給のための貝類採集活動」へと変化した。畿内を中心とした手工業生産の大きな画期と連動する可能性がある。 ・6世紀中頃以降、製塩活動が若狭全域へ拡大するようになると、浜禰遺跡の貝類採集活動は低調化に転じていく。そして若狭で製塩活動が最盛期となる8世紀には、貝層が形成されなくなるほど貝類採集活動が停滞した。それまで漁撈活動に費やしていた労働投下量を製塩活動に集中させた結果と考えられ、浜禰遺跡が製塩活動に特化していく様相がうかがえる。 ・5世紀後葉~6世紀前葉に浜禰遺跡で供給された魚介類の多くは、荷札木簡に記載された品目や『延喜式』で規定された品目と一致しており、若狭国から貢進された品目は律令制以前から共通するものであった。もし若狭の荷札木簡に記された「海細螺・細螺」にサザエが含まれるならば、浜禰遺跡で5世紀後葉~6世紀前葉に選択的に採集された貝種と荷札木簡の品目は完全に一致する。あるいは「海細螺・細螺」にサザエが含まれなかったとすれば、中央以外への貢進物であった可能性が生じてくる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の予定よりも研究が進展した。本年度に得られた研究成果については、古代食復元に関する研究会で報告し、論文を発表した。同時に、福井県美浜町で講演をおこない、地元への社会還元や普及に努めることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
古代の食生活に関する基礎データの収集を開始しているが、未報告資料についても積極的に分析をおこない、資料化を図る。今後とも、本研究課題を予定通りに遂行して、古代における食生活の多角的な復元を進めていく。
|
Causes of Carryover |
東日本大震災に伴う復興関連調査の支援に業務として従事することとなり、当初予定していた事業の一部ができなかった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
実行できなかった事業もあわせて、予定通りに研究を進めていく。
|
Research Products
(3 results)