2014 Fiscal Year Research-status Report
マイクロビーム走査型3DXRD顕微鏡法の開発と鉄鋼材料への展開
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26870932
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Research Institution | Toyota Central R&D Lab., Inc. |
Principal Investigator |
林 雄二郎 株式会社豊田中央研究所, 分析部量子ビーム解析研究室, 研究員 (30435953)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 量子ビーム / 放射光 / 塑性加工・成形 / 機械材料 / 鉄鋼材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
(a)高エネルギー放射光X線マイクロビームを用いた走査型3DXRD顕微鏡装置を構築した: SPring-8 BL33XU豊田ビームラインにおいてX線エネルギー50keV、ビームサイズ1.2um(ガウシンアン半値全幅)、フラックス6x10^8 photons/sのマイクロビームを形成した。マイクロビームを1mm厚軟鋼板(JIS SPCC, 平均粒径15um, 粒径分布±10um)に入射し透過位置に配置した2次元検出器によりX線回折画像を露光時間40msで取得した。 (b)粒径10umオーダーの鋼材の観察を達成した: マイクロビーム走査型3DXRD装置を用いて(a)と同じ軟鋼板試料の2次元結晶方位マップを測定した。単相解析の結果平均粒径は16umと解析され、粒径10um程度の鋼材の観察に成功した。 (c)結晶粒内方位差及び歪が観察できる可能性を実験的に示した: 20umスリットビームを用いて焼鈍処理した粗大粒化鉄試料の塑性変形前後の2次元結晶方位マップ及び格子定数マップを測定した結果、変形前には見られなかった粒内方位差及び歪が変形後(荷重負荷下)で観察された。 (d)原理的な空間分解能を再構成シミュレーションにより評価した: ある結晶方位マップを仮定し再構成シミュレーション結果と比較したところ、空間分解能は入射ビームサイズの2倍程度であることが分かった。また、その空間分解能程度の大きさの特有なアーティファクトが発生することが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)高エネルギー放射光X線マイクロビームを用いた走査型3DXRD顕微鏡装置の構築: 複数の残件と不具合を残して計画通り達成した。 (2)マイクロビームを使った軟鋼板の走査型3DXRD測定: 平成27年度に実施する計画であったが前倒しして実施した。平均粒径十数um・板厚1mmの軟鋼板の中心部における視野100um程度の結晶方位マッピングに成功した。 (3)結晶粒内方位差及び歪の観察の実験的検証: 20umスリットビームを用いて計画通り達成した。 (4)フェライト・パーライト炭素鋼において母相/第2相の分離可能性の実験的検証: 20umスリットビームでは空間分解能不足であることが示唆されたため実験は実施しなかった。代わりにマイクロビームを想定したシミュレーションを行った結果、フェライト・フェライト粒界が存在する場合はフェライト・パーライトが分離できる可能性が示唆された。 (5)再構成シミュレーションによる原理的な空間分解能の検証: 平成28年度に実施する計画であったが前倒しで実施した。本手法によって得られる結晶方位マップにおける主に結晶粒界位置の空間分解能やアーティファクトを検証した。
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Strategy for Future Research Activity |
(i) (1)の残件の処理と不具合の対策を行う。残件はマイクロビームに対する試料並進2軸のアライメントである。不具合は測定プログラムが不安定であることである。 (ii) 平成28年度に計画していた試料回転ステージのモータ発熱による試料位置ずれの対策を前倒しで行う。 (iii) 平成27年度に計画していた粒径10um程度の軟鋼板の観察(2)は平成26年度に前倒しで達成した。 (iv) 計画通りフェライト・パーライト低炭素鋼(S20C相当)及び590MPa級相当フェライト・マルテンサイト二相鋼の測定及び2相解析を行う。フェライト単相の場合、全空間をフェライトが占めると仮定して解析を行った。しかし上記のような2相の場合、恐らくフェライトが存在しない位置が第2相が存在する位置であるという解析方法となることが予想される。ある位置にフェライトが存在するかどうかの判定基準はあるパラメータに依存する(そのパラメータを操作すると、フェライトが占める面積が変化する)。したがって、平成27年度ではフェライト・フェライト粒界が必ず存在するような試料を用いてそのパラメータを決定することにより、フェライトと第2相の面積分率が再現できるかどうかを検証する。フェライト・フェライト粒界が存在しない場合の2相解析については平成28年度に試みる。フェライト・パーライト鋼については、もしパーライトの回折斑点を検出することができれば、フェライトと同様な解析をパーライトにも適用することにより2相解析が可能かどうかについても検証する。
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Research Products
(1 results)