2014 Fiscal Year Annual Research Report
映画・映像メディアに関する地域ネットワーク型アーカイブ学の基盤形成
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26880017
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
中路 武士 鹿児島大学, 法文学部, 准教授 (50736254)
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Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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Keywords | 映画 / 映像 / 地域 / メディア / アーカイブ |
Outline of Annual Research Achievements |
研究初年度にあたる本年度は、まず鹿児島県の奄美群島で、記録映像の調査を開始した。残念ながら、高温多湿という環境のなか、フィルムがすぐに傷んでしまうため、個人所有の記録映像の多くがすでに失われている現状が明らかになり、個人映像資料の収集には至らなかった。しかしながら、奄美群島広域事務組合の視聴覚ライブラリーにおいて、奄美大島関連映像のデジタル化の現状を把握することができ、本土復帰に関する写真データ資料などを収集することができた。また、名瀬市政30周年記念映画の『奄美のこころ』や与論町役場の『与論島映像』をはじめ、再生不可能な状態にあるフィルムやベータカムを複数発掘することができ、そのデジタル・アーカイブ化へ向けた取り組みを開始することができた。そして、鹿児島市内においては、主に8mmフィルムの記録映像の調査を、かごしまフィルムオフィスと連携して開始した。 このような実地調査と並行して、映像モニターやHDD、パソコンなどの設備・備品を整え、こうした記録映像だけでなく、戦後70周年に鹿児島で放送される番組映像の表象分析を行うための映像アーカイブの環境の構築を行った。「映像と戦争の記憶」に関しては、韓国ソウルの高麗大学校日本研究センターで開催された国際シンポジウムで研究発表を行うとともに、「デジタル時代の映画」をめぐる論文を、応用文化科学センターの紀要に寄稿した。また、京都市立芸術大学芸術資源研究センターのアーカイブ研究会をはじめ、映画・映像をめぐる研究会やシンポジウムに数多く参加しながら、研究者たちと打ち合わせを重ね、アーカイブ構築研究の進展に向けた様々な知見を深めることができた。 さらに、鹿児島大学を拠点に、鹿児島コミュニティシネマと連携して、映画をめぐるトーク・イベントを2回開催し、映像を媒介にして、大学と地域を結びつける取り組みも始めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、鹿児島市や奄美群島で映像の実地調査を実行し、デジタル化して保存が必要となっている映像を見出すことができた。また、映像アーカイブ構築研究の基盤形成のために有益な知見を、数多くの研究者と交流することによって深めることができた。そして、国際シンポジウムおよび国際的な学術誌で研究の成果も発表することができた。8mmフィルムをはじめ、個人所有の記録映像の発掘の進捗状況は良くなく、今後さらなる調査を実施していく必要があるものの、鹿児島コミュニティシネマやかごしまフィルムオフィスとの連携体制の構築をはじめ、初年度としては研究をおおむね順調に進展させることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も継続して、記録映像の実地調査を行っていく。そして、昨年度に見出したフィルム(『奄美のこころ』や『与論島映像』)のデジタル化保存を具体的に進めていく予定である。地域と映像をめぐる映画上映会やトーク・ディスカッションを実施するとともに、地域映像をめぐる研究会を鹿児島で組織化して、本研究課題の成果を発表していく。それと並行して、記録映画やメディアをめぐるシンポジウムやワークショップに積極的に参加し、研究者との交流を続けることで、新たな知見を獲得していく。また、これまでの研究の成果として、映画・映像のデジタル化についての論文、戦争の記憶と映像の記録についての論文を執筆し、それぞれ共著(分筆担当)を出版する予定である。
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Research Products
(6 results)