2014 Fiscal Year Annual Research Report
図領域統合による頑健な注意選択と物体位置知覚アルゴリズムの研究
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26880019
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Research Institution | Tokyo Denki University |
Principal Investigator |
我妻 伸彦 東京電機大学, 理工学部, 助教 (60632958)
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Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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Keywords | 図地領域分離 / 視覚的注意 / 神経細胞同期 / 計算モデル / 大脳視覚情報処理 / コンピュータビジョン |
Outline of Annual Research Achievements |
人間は、複雑な自然画像中から最も注目すべき物体や領域を選択し、視覚的注意を向ける事で実環境に適応している。また、コンピュータ・ビジョンで最も重要な問題は、画像中に物体が「どこ」にあるかを、解明する事である。これらの能力を実現するため、図領域を統合し、注意選択を行う大脳視覚領野の情報処理メカニズムについて研究した。具体的には、生理学的知見に忠実な計算モデルを構築し、人間が図領域へと注意を向け、物体位置を知覚するメカニズムを明らかにする。 平成26年度には、人間の図地領域統合に極めて重要な役割を果たすと考えられる神経細胞同期に着目し、その背景にある皮質メカニズムを計算論的に研究した。視覚的注意が図領域検出モデル細胞へと伝達される計算モデルを計算機上に実装し、シミュレーションを行った。視覚的注意により、2つの図方向検出モデル細胞間の神経細胞同期がどのように変調されるかを観察した。提案モデルでは、視覚入力と視覚的注意はそれぞれ異なる神経伝達物質により、仲介される。これは、近年報告された大脳生理学的知見に忠実に従った特性である。モデルに適用された注意信号は、図方向検出モデル細胞の発火強度だけでなく、同期の特性も定量的に再現した。この結果は、図領域検出細胞の神経同期により、図領域が統合され、そこへ注意選択が行われる生体の視覚情報処理メカニズムを示唆している。 これらの研究成果は、神経科学だけでなく知能ロボティクス分野も著しく発展させる可能性を持つ重要なものと考えている。また、これらの研究成果を発表する論文を現在執筆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初研究計画で構想されたモデルよりもより複雑で、生体の情報処理機構に忠実な計算モデルを構築した。提案モデルは、生体の情報処理特性を定性・定量的に良く再現しているため。また、この研究成果を反映させた、図領域統合に基づく生体の注意選択の計算モデルの実装を現在進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの計算シミュレーションから得られた知見に基づく、図領域統合による注意選択の計算モデルの実装を完了させる。実装した計算モデルに、様々な画像を与え、シミュレーションを行う。これらのシミュレーションから、人間の注意選択の特性を考察する。また、モデルの性能を評価する心理物理実験を行う予定である。
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