2014 Fiscal Year Annual Research Report
超広帯域レーダを軸としたセンサ融合による目標追尾法の確立
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26880023
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
佐保 賢志 立命館大学, 理工学部, 助教 (00732900)
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Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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Keywords | 追尾フィルタ / 超広帯域レーダー / センサ融合 / 速度観測 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は以下の3点を明らかにした。 1.理論検討において、位置と速度を観測値として用いるα-β-γフィルタの特性を解明すると共に、この検討に基づき新たなα-β-γフィルタを提案し、その有効性を示した。まず位置・速度観測α-β-γフィルタの定常予測誤差及び誤差分散を解析的に導出し、さらにMinimum Varianceフィルタ規範による最適パラメータ設定方法を解明した。さらに、この結果に基づき、位置と加速度を観測位置で、速度のみを観測速度で平滑化する新たなα-β-γフィルタを提案し、同様に定常誤差及び最適パラメータを導出した。特性評価の結果、速度観測性能が比較的悪い場合であっても提案フィルタは、従来の位置速度観測α-β-γフィルタより良い精度で追尾できることを示した。以上より、これまでにほとんど明らかになっていなかった位置と速度を共に観測値として用いる追尾フィルタの理論特性を解明した。 2.実験検討において、超広帯域レーダとドップラーセンサを用いるための環境を整備し、簡易な目標についてデータを取得した。その結果、理論検討との特性の一致が確認できた。 3.実験データに基づき、レーダとドップラーセンサを用いた実験に対応するシミュレーション系を構築し、これを用いて各種の形状を有する運動目標の追尾法を開発した。その結果、cm/sオーダーでの高精度な速度推定が実現した。さらに、得られた速度を活用し、木法の運動だけでなく形状を高精度に推定する手法を開発した。加えて、シミュレーションにおいても理論検討との特性の一致を確認した。以上より、理論、シミュレーション、実験の全てにおいて開発した技術の妥当性を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初計画どおり、位置と速度を観測値とする追尾フィルタ理論の構築と、実験とシミュレーションにおけるその有効性評価ができた。理論構築に関しては、位置と速度を観測値とする新たな追尾フィルタの提案を行うと共に、その有効性と位置付けを解明し、論文誌への掲載が決定した。これは期待以上の成果である。シミュレーションに関しては、構築した理論を超広帯域レーダシステムに実装し、運動目標の追尾のみでなく形状推定に活用する手法を提案した。この形状推定について有効性を示したことは期待以上の成果であり、この成果により国際会議における発表、さらに同発表により優秀発表賞を受賞するに至った。実験検証に関しては、超広帯域レーダシステムの整備、加速度センサ等次年度以降に主に用いる物品の整備などができ、基礎的なデータも取得できている。以上より順調に進展しているといえる。 一方で、当初計画にあった位置と加速度を観測するフィルタについては、本年度はあまり検討ができずこの点はやや遅れているといえる。しかしながら、上述の位置と速度を用いるフィルタの特性解明を通じて提案した新たなフィルタは、加速度観測の場合にも同様のアイディアで拡張可能であり、次年度直ちに一定の成果が得られることが見込まれている。 以上を総合的に判断すると、加速度観測に関する少しの遅れはあるものの、速度観測値を融合するフィルタの理論とシミュレーションにおいて期待を大幅に上回る成果が得られたと判断できる。以上より上記区分での達成度評価が妥当である。
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Strategy for Future Research Activity |
位置と加速度のデータ融合に関して前年度やや遅れていたことを受け、当初計画を変更し、次年度前半は位置と加速度を観測値とするフィルタについて主に検討する。本年度に構築した位置と速度を融合する追尾フィルタ理論に基づき、加速度と位置、さらに位置・速度・加速度が全て得られる場合について検討を進めていく。これらの推進は、本年度の成果に基づけば、比較的容易と見込まれており、大きな問題とはならないと考えている。また、位置と速度を観測値とするカルマンフィルターの理論検討についても当初計画通り実施する。この検討に関しては既にいくつかの先行研究があるため、これらの文献調査から開始し、先行研究の問題点の発見と解決を目指す。さらに、この位置と速度を観測値とするα-β-γフィルタに関する検討は当初計画より進展しており、更なる発展が見込まれるため、もしカルマンフィルターのみによる解析及び検討が困難な場合は、α-β-γフィルタをベースとしたアプローチも検討していきたい。 上記について、実験とシミュレーションによる検討も進める。本年度はこれらは理論検討の確認という位置付けであったが、次年度は理論のみによる検討が困難な部分もあると見込んでいるため、理論と実験・シミュレーションの全てのデータを融合することによる理論構築という観点も取り入れる。 さらに、次年度後半には複数目標についても可能ならば検討していきたいと考えている。
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