2014 Fiscal Year Annual Research Report
医学研究における研究参加者個人のゲノム情報の通知に伴う倫理的問題に関する研究
Project/Area Number |
26882012
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高島 響子 東京大学, 医科学研究所, 特任研究員 (10735749)
|
Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
|
Keywords | 研究倫理 / ゲノム研究 / 遺伝情報の開示 / 研究参加者 / Whole genome sequencing |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ヒトの全ゲノム配列を用いて行う国内外の医学研究において、研究参加者個人へのゲノム情報の通知がどのように行われているかを明らかにし、今後の医学研究におけるゲノム情報の取扱いについて、望ましい通知の在り方を提示することである。平成26年度は、文献調査を通じて全ゲノム配列の解析を伴う研究における倫理的課題を整理した。その結果、1.研究参加者本人への事前の説明と同意、2.研究に使用するデータの範囲と結果の通知範囲、3.研究終了後のデータの使用/公開の範囲、4.家族への影響と事前の説明の必要性、という4つの枠組みが抽出された。特に、現在多くの雑誌が、学術論文の投稿に際し事前に塩基配列をデータベースに登録することを義務づけていることから、個々の研究における解析結果と同時に、ゲノムおよびその解析結果の公開に関する問題が重要であった。ゲノム配列は一生不変であることから、一度公開されれば、現在は明らかになっていない疾患との関連遺伝子が、将来研究が進むことによって明らかになる場合や、同意の撤回が不可能な場合も考えられる。さらに、公開されたデータから個人が特定される可能性も考えられ、プライバシーの保護も慎重に検討されなければならない。研究を実施するには、参加者からの十分な理解に基づく同意が必要だが、そもそも上述のようなゲノム研究における問題の複雑さを参加者が「十分に理解」できるかどうかが課題であり、理解を助ける、あるいは確認する方策が必要と考えられた。たとえば、個人の全ゲノム配列(遺伝型・表現型含む)を収集、解析、公開するPersonal Genome Projectでは、研究参加者はオンライン上のテストに回答し、全問正解した場合にのみインフォームド・コンセントのための説明を受けることが可能という工夫が取られていた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全ゲノム解析を伴う研究における倫理的課題を整理することができ、当初の研究計画の前半を達成したと考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成26年度に行った論点整理をもとに、実際の全ヒトゲノム解析研究を伴う研究における結果開示の方針についての調査を実施し、最終的に望ましいと考える方法を提示する。なお、当初の予定では研究者を対象とする質問票調査を検討していたが、予算の都合上困難であると判断されることから文献調査に変更する。
|