2014 Fiscal Year Annual Research Report
高齢者の日常生活下での症状評価法における客観的妥当性に関する研究
Project/Area Number |
26882016
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
金 鎭赫 東京大学, 教育学研究科(研究院), 研究員 (00735095)
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Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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Keywords | 日常生活下調査 / 高齢者 / 身体活動度 / 自覚症状 / 抑うつ気分 |
Outline of Annual Research Achievements |
日常生活下調査(Ecological Momentary Assessment; EMA)は、日常生活下でその瞬間の事象を繰り返し記録することにより、想起によるバイアスを回避し、行動や気分などの経時変化を把握できる方法とされている。本研究では、このEMAの特長に着目し、想起によるバイアスをどの程度回避できるか、またEMAの記録にどのような要因(例:生理的・環境的要因)が反映されているかについて、健常な高齢者を対象に検討しEMAの妥当性を検証することを目的としている。 26年度は、健常な高齢者12名を対象としてEMA調査を行った。調査参加者は、スマートフォンを携行して1週間生活し、起床時、就寝時、スマートフォンのアラームが鳴った際(1日4回、およそ4時間ごと)を含む1日約6回程度、スマートフォン上で実行されるプログラムにより、身体症状(疲労感、眠気、痛みなど)、心理的ストレス、気分状態(抑うつ・不安気分など)を記録した。身体活動度の計測には、調査期間の1週間にわたって常時、腕時計型加速度センサーを装着し、日常生活下で1分当たりの身体の微細な自発運動を客観的・連続的に計測した。 26年度の研究では、調査を最後まで実行した9名(男性6名、71.3 ± 6.6歳)を対象とし、EMAによる自覚症状とEMA記録時点周辺の身体活動度の関係を調べた。その結果、抑うつ気分の悪化に伴う身体活動度の低下が示され、高齢者の日常生活下での症状評価法における客観的妥当性が示唆された。この結果は、EMAを用いた自覚症状の客観的かつ正確な評価に貢献し、高齢者の精神的健康の増進や精神疾患のリスク減少に役立てることができると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、健常な高齢者と健康成人(対照群)を対象として、①EMAの記録に対するコンプライアンス(携帯情報端末による一日数回の記録が可能であるか)など、高齢者群と健常成人群の差、②EMAと質問紙で記録されたデータの関連性(各自覚症状の項目について双方にどの程度差があるか)、③EMA及び質問紙で記録された各自覚症状と客観的外的基準の関連性(妥当性の検討)、④さらに②と③の関連性について、高齢者群と健常成人群の差、また調査参加者属性などの影響の有無(EMAの高齢者での応用可能性の検討)、などを調べることを計画していた。データの蓄積は順調に進めており、主に上記の③を中心としてデータ解析を行い、研究目的を達成するための知見が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
26年度に引き続き、データの蓄積・処理を行い、統計解析を本研究の全課題へ拡張していく予定である。特に、高齢者群と健常成人群で、また調査参加者属性などにより差が認められるかを調べる。EMAと質問紙による自覚症状の自己評価の間、またそれらと客観的外的基準(身体活動度と社会環境的要因)の間の関連性が両群で共通しているかを検討する。共通しない場合は、その差について明らかにし、高齢者でのEMAの応用可能性を検討する。また、本研究の結果は、学会発表または学術雑誌への論文投稿によって行う。
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