2015 Fiscal Year Annual Research Report
室町末期から江戸時代の鎧に用いられる鉄鋼材料と和鉄の性質
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26882021
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
塩出 奈都子 (釘屋奈都子) 東京藝術大学, 大学院美術研究科, 専門研究員 (30739074)
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Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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Keywords | 鉄鋼 / 文化財 / 延性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は和鉄の特性の一つとして考えられる「延性」に着目し、和鉄を用いて製作されたと考えられる鏨資料を用い、その引張特性を調べた。具体的には、金属組織観察、成分分析、また引張試験を行った。含有元素の定量分析は、ICP 法と燃焼法にて行った。金属組織観察は、鏨の一部を切断した後、観察部位を鏡面研磨、2%ナイタール腐食後し、金属光学顕微鏡にて観察を行った。引張試験は、JIS Z 2241に準拠し行った(島津製作所製オートグラフ AG-100kN-X)。 鏨資料の含有元素を調べた結果、炭素濃度は1.09mass%であり高炭素鋼である。その他Si、 Mn、 P、 Sを調べた結果、0.088、 0.02、 0.029、 0.011mass%である。日本古来のたたら製鉄により砂鉄と木炭を使用して作られた和鉄は、Si、Mn、Sの値が現代鋼より低くなる特徴があり、以上の結果は先行研究と比較するとやや値が高いが、その傾向を示すものであった。金属組織を観察した結果、パーライト組織およびその炭化物が粒状化した炭化物分散組織であった。また、組織は不均質であり、一部荒いパーライト組織を含む。和鉄は金属組織が不均質となることから、成分分析の結果とも併せると、本資料は砂鉄を使用したたら製鉄で作られた鋼を用いて製作されていることが考えられる。 そこで、鏨資料の引張特性を2点測定したところ、引張強さは907N/mm2、787N/mm2、破断伸びは9%、18%である。引張特性について、同様の金属組織を持つ現代鋼の値と比較したところ、引張強さについては鏨資料のほうが高く、破断伸びについては鏨資料のほうが低い延性を示した。破断伸びは引張強さと相関があるとされており、鏨資料の延性は、現代鋼と比べても大差はないことが分かった。
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Research Progress Status |
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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