2014 Fiscal Year Annual Research Report
筋性拘縮の発生メカニズムの解明と新たなリハビリテーションの治療戦略の開発
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26882030
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
本田 祐一郎 長崎大学, 病院(医学系), 技術職員 (40736344)
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Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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Keywords | 不動 / 筋性拘縮 / 線維化 / マクロファージ / IL-1β / TGF-β1 / 低酸素状態 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は「筋性拘縮の発生メカニズムに関わる分子機構の解明」を主目的として掲げ,不動化した骨格筋においてマクロファージを介したIL-1β/TGF-β1シグナリングの変化や低酸素状態が惹起されるか否かを検索した.実験動物には8週齢のWistar系雄性ラット50匹を用い,両側足関節を最大底屈位で1,2,4,8,12週間ギプスで不動化する不動群(各5匹,計25匹)と同期間,通常飼育する対照群(各5匹,計25匹)に振り分け,各不動期間終了後は両側ヒラメ筋を採取した.そして,右側試料にはマクロファージのマーカーであるCD-11bあるいは筋線維芽細胞のマーカーであるα-SMAに対する免疫組織化学染色を施し,筋線維100本あたりの陽性細胞数を計測した.一方,左側試料は分子生物学的手法に供し,IL-1βやTGF-β1,HIF-1αそれぞれのmRNA発現量を半定量化した.その結果,CD-11b陽性細胞数ならびにIL-1β,TGF-β1のmRNA発現量は各不動期間とも不動群は対照群より有意に高値を示したが,不動期間による有意差は認められなかった.一方,HIF-1αのmRNA発現量は不動4週以降において不動群は対照群より有意に高値を示し,不動期間で比較すると不動4,8,12週は不動1,2週より有意に高値であった.さらに,不動群におけるα-SMA陽性細胞数は各不動期間において対照群より有意に高値で,不動期間で比較すると不動4,8,12週が不動1,2週より有意に高値を示した.以上の結果とこれまでの所属研究室の成果から,1,2週間という短期の不動で骨格筋内のマクロファージが増加し,このことがIL-1βやTGF-β1の発現増加を促すとともに,これらの相互作用によって筋線維芽細胞への分化も促され,線維化の発生につながったと推察される.そして,4週間以上の長期の不動ではヒラメ筋に低酸素状態が惹起され,このこととIL-1βやTGF-β1の発現増加が相互に作用し,筋線維芽細胞への分化もさらに進み,線維化の進行につながったと推察される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は「筋性拘縮の発生メカニズムに関わる分子機構の解明」という研究目的を基盤に計画を進めてきた.その結果,筋性拘縮の主要な病態である線維化の発生に骨格筋内でのマクロファージを介したIL-1βやTGF-β1の発現増加が関与することが明らかとなった.つまり,これらの成果から本年度の研究目的は概ね達成されていると考えられ,本研究課題は当初の計画通りに進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究結果から,筋性拘縮の発生メカニズムにはマクロファージを介したIL-1β/TGF-β1シグナリングが関与していると推察された.そして,このようなIL-1βやTGF-β1の変化と低酸素状態の惹起が相互に作用し,筋性拘縮が進行していく可能性が示唆された.来年度はこのような筋性拘縮の分子メカニズムを踏まえた新たなリハビリテーション戦略の開発を主要な研究目的として計画を進めていく.具体的には当初の計画通り,筋性拘縮に対する電気刺激療法の生物学的効果を検索し,これが新たなリハビリテーション治療戦略となり得るか否かを検討する予定である.
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