2014 Fiscal Year Annual Research Report
発育期からの足関節捻挫の再受傷予防を目指した神経系評価指標の確立
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26882035
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Research Institution | Jobu University |
Principal Investigator |
二橋 元紀 上武大学, 商学部, 講師 (20738017)
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Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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Keywords | 足関節捻挫 / 再受傷 / 皮膚反射 / 発育期 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、足関節捻挫再受傷に対する神経生理学的な評価指標の確立を目指して研究を進め、特に中枢神経系を介した足関節の運動制御機構およびその回復過程の相違を足関節捻挫の受傷頻度という観点から明らかにすること目的とした。また、発育期コホート集団の中で神経生理学的な変化と関連性のある因子を探ることを第二の目的とした。 第1課題として、申請者が以前に示した慢性的不安定性下における長腓骨筋皮膚反射中潜時成分の抑制性変化がいつから発生するのかを特定するため、初回足関節捻挫受傷から1週間後、2週間後、1ヶ月後、2ヶ月後、3ヶ月後、および6ヵ月後に時系列的に皮膚反射中潜時成分を評価した。併せて、電気刺激に対する感覚閾値、機能的足関節評価、主観的疼痛尺度の変容を評価した。第2課題として、足関節捻挫再受傷の症例ではどのような神経生理学的な回復過程を示すのか検証した。実験手法は第1課題と同様であり、初回足関節捻挫群およびコントロール群との神経生理学的な回復過程パターンの相違を比較検討した。第3課題として、発育期からの予防対策につなげるため、発育期に対する前向きコホート研究の中で、再受傷のリスク要因となりうる身体特性および外傷特性を検証した。 現在のところ、初回捻挫群では受傷から4週間後に長腓骨筋皮膚反射中潜時成分に抑制性変化が認められ、受傷から3ヵ月後にはコントロールレベルまで回復することが明らかになった。一方で、複数回目捻挫群では抑制性変化が3ヵ月後に依然として残存している傾向にある。足関節捻挫再受傷の要因として受傷頻度に伴う神経機構の違いが明らかとなれば、足関節捻挫後の新たな再発予防対策の確立につながることが期待される。第3課題では、先行研究と同様に発育期世代である中学生期においても、小学生期における足関節捻挫受傷頻度がその後の足関節捻挫再発のリスク要因となることが再確認されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度までに、計画を予定していた初回足関節捻挫群における神経生理学的な回復過程の検討(第1課題)を概ね順調に実施することができた。被験者数は成人9名であり、受傷後から3ヵ月後または6ヵ月後まで回復過程を追うことができた。その結果として、上記した通り4週後での長腓骨筋皮膚反射中潜時成分の抑制性変化、および3ヵ月後において回復するという結果を得ることができた。さらに、一部計画としていた複数回目足関節捻挫群に関して(第2課題)も、昨年度までに比較的多くの被験者にて実験検討を開始することができた。回復の全過程を全被験者にて検討することはできていないが、第2課題については当初より平成27年度においても検討していくことを予定しており、達成度としては概ね順調に進んでいると考えられる。結果に関しても、複数回目捻挫群では初回捻挫群とは異なる神経生理学的な回復過程を示す傾向が認められつつあり、良好なスタートを切れた。 また、皮膚反射を手法とした神経生理学的な回復過程だけではなく、電気刺激に対する感覚閾値、機能的足関節評価、および主観的疼痛尺度に関しても、併せて測定評価を実施できたおり、実験手法上に関して遅延等の問題点は現在のところ発生していない。 一方で、第3課題の発育期スポーツ現場におけるコホート研究に関しても年度初めのメディカルチェック(関節可動域、タイトネス、パフォーマンステスト等)、問診調査(傷害既往、頻度、重症度等)を順調に行なうことができ、足関節捻挫のリスク要因に関する検討をスタートすることができた。また、一部結果に関して、日本体力医学会大会において研究発表することもできた。その後もコホート集団における傷害発生調査を継続できており、足関節捻挫発生のリスク要因の解明に関して順調に研究計画を実施できているものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度中の結果を踏まえ、平成27年度の計画通りに第2課題(複数回目足関節捻挫群)の被験者数を増やすとともに、受傷後からの回復過程を追っていく予定である。併せて、初回足関節捻挫群と複数回目足関節捻挫群およびコントロール群の3群における比較検討を実施する。また、足関節捻挫に関する過去の受傷頻度による相違を明らかにするために、複数回目足関節捻挫群をさらに2-3回目足関節捻挫群および4回目以上足関節捻挫群のように細分化することを模索している。同じ複数回目足関節捻挫群といっても低頻度群(2-3回目)と高頻度群(4回目以上)との間で相違点が見出される可能性もある。受傷頻度に伴う再発リスクの増大に関しては、コホート集団に対する多くの先行研究において論じられており、中枢神経系を介した神経機構の変化という観点から実証していくためにも、受傷頻度のどの段階で変化が生じてくるのか検討していく必要性がある。 一方で、昨年度実験を進める中で一つ疑問点として挙がったのが、回復過程をより長期的(受傷から1年以上)に経過観察すると皮膚反射中潜時成分の回復過程はどのように推移するのかという点である。こうした疑問点を解決すべく回復過程の追跡調査を可能な限り長期的に継続していくことを予定している。研究推進に向けて、時間的な制約も考慮しなければならないが、可能な被験者で1年以上まで経過観察を加えていくことを考えている。 さらには、発育期への応用という観点より、発育期に対する前向きコホート調査研究を継続する。発育期選手約120名規模のコホートにおいて、年度初めの問診調査、メディカルチェックを行ない、その後の外傷・障害発症の集計を基に、ロジスティック回帰分析し、足関節捻挫再受傷のリスク要因をフィールドレベルでも検討する。併せて、神経生理学的な指標に関連すると考えられる項目・要因を探っていく。
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