2014 Fiscal Year Annual Research Report
非線形力学系理論からみた身体運動における熟練の解明
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26882038
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Research Institution | Takachiho University |
Principal Investigator |
鈴木 啓央 高千穂大学, 人間科学部, 助教 (00734758)
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Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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Keywords | 熟練 / 実験系心理学 / 非線形力学系理論 / 運動制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,“熟練している”とはどういうことかを解明する横断的な視点と,“熟練していく”とはどういうことかを解明する縦断的な視点から,ヒトの身体運動における熟練とは何かを解明することである.対象とする身体運動は,テニスや卓球といったネット型スポーツの試合場面でみられるような,環境の変化(飛来するボールの位置や頻度が様々に変化する環境)に応じて様々な動作(フォアハンドやバックハンド)を連続的に切り替える運動である. 平成26年度では前者の視点に関する研究に尽力し,この視点に関わるこれまでの研究成果を国際学会にて発表,また,国際学会誌に投稿した.加えて,平成27年度において縦断的な視点からの研究を実行するにあたり,その実験環境および器材の整備を行った. 具体的には,Human Movement Science誌において論文が掲載された.本論文では,上述した身体運動において,熟練者は未熟練者と比較して,ボールの投射頻度がより速い条件下でも複数の動作を円滑に切り替えることができることが示された.すなわち,より時間的制約の強い環境の変化に対して適応できることが示された.また,その熟練度の相違が生じる要因を検証し,その成果を,アジア南太平洋スポーツ心理学会において発表した.ここでは,上述した相違が,ネット型スポーツでみられる反復練習において獲得される基本的な動作パターンによって生じることが発表された. これらの研究成果は,平成27年度において実行する,“熟練していく”とはどういうことかの解明に対して重要な意義をもつ.すなわち,運動学習が最も促進し得る学習環境の制約強度が熟練度により異なること,そして,学習者が学習すべきことは,環境の変化に適応できる基本的な動作パタンであることを,これらの成果は示唆している.平成27年度では,これらの成果を基に実験およびデータ分析を行う予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
申請時の研究計画では,運動学習の過程を観察するうえで,“個々の”学習者にとって適切な学習環境の制約強度を同定することを平成26年度では目指していた.しかしながら,現在の進行度では,概ね分類できる学習者ごと(上級者,中級者,初心者)の制約強度を同定できている段階である.この理由としては,投稿した論文の改訂作業に手間を要し,予備実験を行う十分な時間が取れなかったためである.ただし,その作業も完了したため,今後は実験またはデータ分析に用いることができる時間が増えると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度では,“熟練していく”とはどういうことを解明するために,運動学習の過程を詳細に観察する.そのためには,個々の学習者にとって適切な学習環境の制約強度を同定し,その環境下での運動学習の過程を観察することが必要だと考えている. この目的に対し,まず,予備実験を繰り返し,個々の学習者にとって適切な制約強度の同定を行う.現状では,対象とする身体運動を変更することは考えていないため,運動を観察するための動作解析手法や分析手法は,現在までの手法を踏襲する予定である.予備実験において,学習環境の制約強度および学習実験に必要な期間を同定した後,本実験を行う予定である.そして,本実験のデータを分析し,その結果を学会にて発表する予定である.
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