2014 Fiscal Year Annual Research Report
近世オスマン帝国のもの書く人々:文化的選良層の社会生活と心性についての文化史研究
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26883006
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
宮下 遼 大阪大学, 言語文化研究科(研究院), 講師 (00736069)
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Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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Keywords | トルコ文学(史) / トルコ文化史 / 地中海通文化比較研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は本研究「近世オスマン帝国のもの書く人々:文化的選良層の社会生活と神聖についての文化史研究」の二つの大項目のうち一番目に当るⅠ.「文化的選良の社会身分と人的社会結合の実態」の研究を行い、現在その成果をまとめつつ、オスマン帝国における庶民像を窺う学会発表「トルコ古典詩における職人の美化:「床屋の書」を中心に」」日本中東学会第30回年次大会, 於東京国際大学, 平成26年5月11日を行った。これに加えて本研究の骨子である「もの書く人々」についての経年的変化を追う試みを念頭に置きつつ、論文「越境なきディアスポラ作家ラティフェ・テキン:「我が家の言葉」をめぐって」『世界文学』116号,2014を執筆、公刊したが、これに関しては本邦では希少なトルコ現代文学の業績にもつながり、具体的にはラティフェ・テキン『乳しぼり娘とゴミの丘のおとぎ噺』河出書房新社, 196頁, 平成26年7月8日、アスル・エルドアン著「ある入院患者の日記」宮下遼訳, 『すばる』2014年5月号, 平成26年4月6日, pp. 252-270.(解説, pp. 267-270)、および研究会発表「謙虚な虚無主義者アスル・エルドアン」中東現代文学研究会、於東京外国語大学本郷サテライト、平成27年1月10日という三点の成果を上梓、発表する運びとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究はオスマン帝国についての文化史研究であり、同時にもの書く行為という前近代には限られた選良層によって担われていた人類の営みを世界史に中に対置するのが最終的な目的である。この点で、本年度の研究がトルコ文化史のみならず、トルコ現代文学、現代社会をも包括するパースペクティヴを獲得した点は、本研究の潜在的な発展性を示唆するものであり、研究遂行者としては予想以上の成果であったと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
27年度は本研究の大項目の二番目に当るⅡ.文化的選良の心性、を「文化的選良の生活意識」、「庶民的心性の共有」という二段階を経て実行する。具体的には、前者の研究項目では文化的選良たちの心性と生活基調を、紳士意識と差別意識という密接に絡み合った二つの意識構造の検討を通じて解き明かすため、礼儀作法を説く「助言の書」資料を用いる。一方、後者の研究項目では、イスタンブルという生活空間を庶民と共有した文化的選良たちの「一都市住民」としての心性を解明するため、「アヤソフィア創建伝説」や「イスタンブル征服伝説」、あるいは同時代の「狂人伝」、「狂人奇跡譚」のような、作者の階層の上下、韻文散文の別を問わずに広く記録される伝説、俗信の存在に注目し、地誌的旅行記群を中心史料として用いて研究を行う。
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Research Products
(3 results)