2015 Fiscal Year Annual Research Report
同性愛者専門雑誌の言説にみる同性愛解放運動の影響の研究
Project/Area Number |
26883009
|
Research Institution | Meiji Gakuin University |
Principal Investigator |
石田 仁 明治学院大学, 社会学部, 研究員 (40601810)
|
Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
|
Keywords | 同性愛 / セクシュアリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
同性愛者専門雑誌(以下同性愛誌)における言説は、同性愛解放運動に限定的な影響を与えるにとどまった。また、いくつかの点でさらなる研究の必要性が明らかになった。 第一に、同性愛解放運動としても複合差別に目を向けたという意味でも萌芽的な動向であった「富士高校放火事件」の報道および言説を詳細にみたところ、同事件の扱いは70年代の終わりから80年代初頭にかけて同性愛誌で一時的に活況であったものの、当研究課題の対象年代(85年~)においてはきわめて低調に推移していた。理由として、事件の論点が当初の強制的な取調べから国家賠償訴訟に移行したからと思われるが、解放運動の1つの成果となったアカー府中青年の家裁判は、88年の富士高事件の結審後、5年を経ずして提訴され、また、同じ国賠訴訟であった点で運動の経験や論点、資源等が継承されなかった事実については、疑義が残る。この点は、雑誌言説研究単体では限界があり、関係者への聞き取りなどによって雑誌言説と運動の関係をあらためて明らかにする必要がある。 第二に、同性愛誌における男性同性愛者の「生きづらさ」に関する自己言説は、当時、ひとかどの成人男性が感じるであろう孤独感や寂寥感(「ダンディズム」)として解釈されていた。「ダンディズム」は、男性性の「成熟」(として信じられていた感覚)と女性排除によって成立するものであり、「生きづらさ」は社会運動へ接続されなかった。接続を見るためには、本課題の対象年代以降(2001年以降)の動向を組み込んで研究する必要がある。 申請時に提起していた仮説(同性愛の「段階モデル」と「感染モデル」の交絡言説による解放運動の阻害)については、「段階モデル」自体が言説に潤沢にあらわれてこず、検証が十分にできなかった。より前の時代(60-70年代)のモデルだった可能性があり、対象年代を前にも拡げて研究する必要がある。
|
Research Progress Status |
27年度が最終年度であるため、記入しない。
|
Strategy for Future Research Activity |
27年度が最終年度であるため、記入しない。
|
Research Products
(10 results)