2014 Fiscal Year Annual Research Report
イラン概念再考―イルハーン朝末期の地方政権と古代ペルシアの記憶―
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26884016
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大塚 修 東京大学, 人文社会系研究科, 助教 (00733007)
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Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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Keywords | イルハーン朝 / ハザーラスプ朝 / ハムド・アッラー・ムスタウフィー / ペルシア語文化圏 / 写本研究 / 歴史叙述研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度は、イルハーン朝支配下のイランにおいて編纂された歴史書や文学作品の写本の調査・収集を進め、これらの作品の中でイランという語と古代ペルシアの記憶がどのように王権を正当化する手段として利用されているのか、についての分析を進めた。 1. 史料収集 2015年3月8日~3月19日にイスタンブルに出張し、スレイマニエ図書館とミッレト図書館において、ペルシア語写本の網羅的な調査を行った。この調査では100点以上の写本の内容を確認し、これまでの研究では取り上げられてこなかったイルハーン朝時代に編纂された作品を数点発見し、画像データを購入した。また、国内では、京都大学大学院文学研究科附属ユーラシア文化研究センターに所蔵されるペルシア語写本の影印本の調査を実施した。これ以外にも、英国図書館からペルシア語写本の画像データを購入するなど、写本の調査・収集に関しては予想以上の成果を上げることができた。 2.史料校訂 本研究課題にとって大きな意味を持つ作品、イルハーン朝末期を対象とするハムド・アッラー・ムスタウフィー著『勝利の書続編』の校訂・訳注作業を進めた。 3. 研究成果の公表 2015年3月28日に東京外国語大学で開催されたイラン研究会で、「初期イスラーム時代における古代ペルシア史の受容:『究極の目的』の分析を中心に」と題する報告を行い、収集した作品の分析の成果の一部をまとめた。この報告では、イランという語や古代ペルシアの記憶が初期イスラーム時代のアラビア語文献の中でどのように受容されていたのかという点を整理し、それが、後のペルシア語文献にどのような影響を与えたのかについての見通しを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
写本調査の調査地を一部変更したものの、イスタンブルでこれまで知られていなかったイルハーン朝時代に編纂された作品を発見するなど、未刊行の史料の収集と分析が順調に進んでいるため。
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Strategy for Future Research Activity |
2015年度は、2014年度に行えず後に回したエジプトとインドにおけるペルシア語写本の調査を実施する。また、国外の研究者からのフィードバックを得るために、イスタンブルで開催されるAssociation for the Study of Persianate Societies の隔年大会で、本研究課題の成果の一部を報告する予定である。
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