2014 Fiscal Year Annual Research Report
現代倫理学における反合理主義的アプローチのメタ倫理学的研究
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26884035
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
佐藤 岳詩 熊本大学, 社会文化科学研究科, 准教授 (60734019)
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Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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Keywords | メタ倫理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、以下の二点を通じて「私たちはいかに生きるべきか」という問への答えを探求することであった。 (1)現代倫理学において近年提唱されているさまざな反合理主義的アプローチに対し、メタ倫 理学の観点から分析を加え、その理論的基礎を明らかにする。 (2)上で得られた成果を ハイブリッド理論の観点から 批判的に検討することで、従来の反合理主義的アプローチが抱えていた問題点を解明し、反合理主義的アプローチが依拠すべきより説得的なメタ倫理学的理論を提示する。 本年度は、主に(1)に注力して研究を行った。そのために、20世紀の合理主義的アプローチを代表する論者であるR.M.ヘアの倫理学を軸として、それを徹底的に批判したB.ウィリアムズ、G.E.M.アンスコムらの倫理学理論を取り上げ、彼らの主張が有するメタ倫理学的含意を検討するとともに、その内容と意義を明らかにした。また、それらと軌道を一にする徳倫理学やケア倫理学の立場および、それらと帰結主義、正義の理論との論争、あるいはウィリアムズらを再批判するT.ネーゲルの議論を参照することで、合理主義と対立する反合理主義の理論的基礎を抽出した。それによって、反合理主義は合理主義に統合できる、ないし、合理主義へと収束するという言説は、反合理主義の本性に不当な修正を加えたものであり、十分に洗練された反合理主義の立場を的確に捉えたものではないという結論を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画としてあげた論点についてはおおむね検討を行い、学会発表等で公表することができたが、いくつかの点についてその問題点を明確にするために、当初予定していた以上のさらなる検討が必要であることが明らかになったこと、また当初の研究計画においては挙げていた海外での情報収集やネットワーク作成に関して、充分な時間をとることができなかったため、やや遅れているが相当であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、まず今年度に明らかとなった課題の解決を行い、その後に、当初研究計画案に示した論点を検討することに注力したい。また、来年度は海外での情報収集を積極的に行って行く。
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