2014 Fiscal Year Annual Research Report
プルースト=ラスキン『アミアンの聖書』『胡麻と百合』電子版と註釈の作成
Project/Area Number |
26884037
|
Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
浅間 哲平 静岡県立大学, 国際関係学部, 講師 (00735475)
|
Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
|
Keywords | 仏文学 / 英米文学 / 美術史 / フランス:イギリス |
Outline of Annual Research Achievements |
フランスの作家マルセル・プルーストは、イギリスの美術史家ジョン・ラスキンの『アミアンの聖書』と『胡麻と百合』を翻訳している。本研究は、ラスキンの原文とプルーストの翻訳を対照し、テクスト上で同時に閲覧できるようにすることを目的とするものであるので、プルースト・ラスキン研究における先行研究を調査・収集した。 また、プルーストはこの翻訳をするにあたり、序文と註をつけ、ラスキンの他の書物を引用し、当時のラスキン研究の成果に言及している。本研究は、これらのプルーストの引用や言及がどの書物からなされたものであるのかを調査することをもうひとつの目的とするものであり、日仏英のプルースト・ラスキン研究の成果を総合的に検証する必要があった。 本年度は日本語で書かれた論文と日本の大学図書館所蔵の他言語で書かれた論文を収集することに専念した。大学間相互貸借:ILLと電子ジャーナルを利用することで、日本において手に入るものをこの段階で手に入れることができたのは作業の効率の上で有効であったと思う。特に日本語で書かれた論文は、海外の研究者がアクセスすることが困難であることを鑑み、慎重に検討することにした。その結果、これまでのプルースト・ラスキン研究の成果については一定の範囲内で整理することができた。 日本で手に入らない研究・論文についてはBnF(フランス国立図書館・パリ)での調査を予定していたが、フランスの書店から購入することで多くを取り揃えることができた。特にJ. Bastianelli編纂による『アミアンの聖書』『胡麻と百合』(2015)から新しい知見を得ることができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本で手に入らない研究・論文についてはBnF(フランス国立図書館・パリ)での調査を予定していたが、フランスの書店から購入することで多くを取り揃えることができた。 また、C.N.R.S.(国立科学研究センター・パリ)内、I.T.E.M.(近代テクスト・草稿研究所)でプルーストの草稿を見ることを予定していたが、プルーストによるラスキンについての草稿が記されたノートは、2014年から2015年現在に至るまでにBnF(フランス国立図書館・パリ)による電子図書館ガリカ(Gallica)で電子化され、I.T.E.M.において閲覧するよりもはるかに精度の高い形で研究できるようになったことから、この電子版をもとに研究を進めることができた。 研究対象とした資料は、フランス国立図書館によって番号付けされた以下のものである。NAF16617, 16618, 16619, 16620, 16621, 16622, 16623, 16624, 16625, 16626, 16627, 16628, 16629, 16630, 16631。
|
Strategy for Future Research Activity |
プルースト・ラスキン研究の分野における先行研究の整理を踏まえ、プルーストが目を通していたと考えられる1900年前後のフランス・イギリスにおけるラスキン研究を収集する。以上の調査で得ることのできない資料がある場合、ラスキン・ライブラリー(ランカスター大学附属)に行って、収集・調査を行う。この結果を検証し、アウトプットの形態を整える。
今後の研究では、プルーストによって書かれたラスキン関係のテクスト、すなわち1900年1月27日に初めてラスキンについて発表した記事にはじまり1909年に書かれたことが分かっているラスキン論まで9年の間に作家によって書かれたラスキンにまつわる批評に翻訳を含めたすべてのテクストを対象とする。プルーストは『アミアンの聖書』と『胡麻と百合』の翻訳につけた序文と註釈で既に自分が書いたテクスト(新聞記事や雑誌記事)を利用していることが知られている。この再利用は断片的であると同時に、ときには改変されているといったように、全体像を把握するのが極めて難しいものである。したがって、今後の研究では、実際にどのようにプルーストがラスキン関連の文章を書き進めていったのか、またその際に既に存在したラスキンのフランス語訳や批評文をどのように利用したのか、といったことが容易に把握できるような形のテクストを編むことで調査を推進していく。
|
Research Products
(2 results)