2014 Fiscal Year Annual Research Report
バルカン戦争期におけるボスニアのイスラーム教徒帰還問題とハプスブルク帝国の対応
Project/Area Number |
26884039
|
Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
米岡 大輔 大阪市立大学, 大学院文学研究科, 都市文化研究センター研究員 (90736901)
|
Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
|
Keywords | ハプスブルク帝国 / ボスニア・ヘルツェゴヴィナ / イスラーム / バルカン戦争 / 難民 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度である2014年度はまず、現時点で国内の図書館にわずかしか所蔵されてきていないバルカン戦争関連の文献や、ハプスブルク帝国史・バルカン史研究の最新の研究文献を集めることからスタートした。とくに2014年は、第一次世界大戦100周年ということもあり、大戦前後の時期を主題とする多数の文献が刊行されたため、それらを収集することに努めた。こうした文献の中には、バルカン戦争を南東欧の局地的な戦争とみなすのではなく、第一次世界大戦との連続性、さらには大戦後の世界史的流れの中で捉えなおそうとするものも見られた。現在これらの文献については順に精読を進めているが、本研究課題である、バルカン戦争期におけるボスニアのイスラーム教徒帰還問題をより多角的な視点から見通し、スケールの大きな枠組みの中に今後位置づけていく際に非常に有益なものとなると思われる。 次に、2015年度実施予定であるオーストリア王室・宮廷・国立文書館及びボスニア国立文書館での史料収集・分析にあたり必要となる機器を準備した。前者の文書館では、複写に際して大量の史料をデジタル化したうえで閲覧・確認する必要があるため、ノートPCとハードディスクをそろえた。他方後者の文書館では、複写機器が整備されておらず、史料のデジタル化を自ら行い収集する必要があるためデジタルカメラを購入した。なお、いずれの文書館で収集した史料についても、帰国後も、今回購入したPCを活用し分析を進める。 最後に本年度の成果としては、2014年10月11日・12日に開催された東欧史研究会・ハプスブルク史研究会合同発表会で、「帝国に帰還する難民-バルカン戦争とボスニアのイスラーム教徒-」というタイトルの口頭発表を行った。その内容に関しては、現在論文を執筆中であり、学会誌に投稿予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、年度末に所属機関の異動が決定したこともあり、海外での研究調査を行う時間を設けることができなかったが、文献収集と研究環境の整備が順調に進んだこと、さらに、これまでの成果を研究大会で公表できたことに鑑みると、研究計画はおおむね順調に進んでいると思われる。
|
Strategy for Future Research Activity |
来年度は、今年度実施できなかったオーストリア宮廷・王室・国立文書館及びボスニア国立文書館での史料収集・分析を行う予定である。まずオーストリアの文書館では、ハプスブルク帝国の共通外務省及びサロニカ領事館を含む在外公館と、オスマン帝国及びバルカン諸国との間で交わされた、ボスニアのイスラーム教徒帰還民に関する文書を集める。次にボスニアの文書館では、以下の2つの課題を明らかにすべく史料調査を実施する。1、ボスニア州政府がこの帰還問題で浮上した財政負担をいかに解消しようとしたのか。2、ボスニア州政府が、地元のセルビア人からの反発をいかに抑えながら、帰還したイスラーム教徒の再定住をどのようにして進めたのか。これらの点が明らかになれば、よりミクロな視点から帰還問題を論じることが可能となるだろう。 なお以上の研究の成果としては、来年度も学会等で口頭発表を行い、論文を学会誌に投稿する予定である。
|
Research Products
(2 results)