2014 Fiscal Year Annual Research Report
日本語学習者の自動詞・他動詞の誤用に対するヒューマンエラーからの検討と教材化
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26884040
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Research Institution | Hiroshima City University |
Principal Investigator |
中石 ゆうこ 広島市立大学, 国際学部, その他 (20535885)
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Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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Keywords | 自動詞 / 他動詞 / 語彙 / ヒューマンエラー / 日本語教育 / 教材 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、日本語学習者にとって習得が困難だと言われる自動詞、他動詞学習の中でも泣き所の一つである「形態の複雑さ」に関する問題を解決することである。 そのために、本研究では新たな試みとして、ヒューマンエラー研究の知見から教材を開発し、効果を実証することを計画している。 本年度は、サンプルとなる教材(色分けした自動詞、他動詞のカードと文を読んで自動詞、他動詞を選択する穴埋め式のクイズ)を作成した。この教材を用いて、海外で日本語を教える日本語を母語としない日本語教師(中国語母語話者3名、ベトナム語母語話者3名)に対して模擬授業を行い、教材の評価をアンケート形式で答えてもらった。また、同じ教材を用いた日本語学習者(中国語母語話者)対象の日本語授業も行い、教材の評価をアンケート形式で答えてもらった。 次に、このサンプル教材をインターネットで一般公開することを目指し、研究代表者のホームページに教材を紹介するページを新規に作成した(2015年4月現在非公開)。一般公開に際しては、2015年度に教材の効果を測ったうえで、その効果が見られた段階で公開実施に踏み切る。効果が見られない場合は、教材の改訂を行う予定である。 さらに、本年度は、成人日本語学習者の自動詞、他動詞の習得研究に加えて、外国人児童生徒の自動詞、他動詞の習得状況についても発展的に研究を行った。これは、前述の模擬授業の受講者であった日本語教師の一人が、中高等学校に所属する日本語教師であったことで、アンケートの結果から成人以外の年齢の学習者の習得にも目を向ける必要性が見出だされたことによる。研究の結果、大人に比べて言語の習得が成功しやすいと言われる児童であっても、自動詞、他動詞の問題が生じることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で開発を目指す新しい教材の効果を実証するに先立ち、海外で日本語を教える日本語を母語としない日本語教師に、サンプル教材を用いた模擬授業を実施し、フィードバックを得ることができた。また、同じ教材を用いた日本語授業も行い、日本語学習者(中国語母語話者)に、教材の評価をアンケート形式で答えてもらった。教材の効果の実証に移る前に、日本語教師および日本語学習者から評価を得たことで、教材に対する客観的な評価が与えられたと考えられる。 また、これまで成人学習者に比較して着目されることが少なかった外国人児童生徒の日本語語彙の習得状況を確認し、自動詞、他動詞が成人学習者だけではなく、年少者にも習得が困難である文法項目であることを確認した。その結果は、国立国語研究所の公開シンポジウムで発表を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2015年度は日本語の自動詞、他動詞に関して、従来の教材を用いた日本語授業と、本研究で開発を目指している新しい教材を用いた日本語授業を行うことで、本研究で開発した教材の効果を実証する予定である。日本語授業の後には、自動詞、他動詞の選択に関する文法テストを実施し、自動詞、他動詞の定着度を比較する。 これらの日本語授業とそれに続く文法テストを実施する機関に関しては、現在調整中であるが、年少者に対する指導での教材の効果も見られるよう、実施校の候補の範囲を広げる予定である。
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