2014 Fiscal Year Annual Research Report
日英バイリンガル児童・生徒の作文力の発達に関する縦断的研究
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26884042
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Research Institution | Hokkaido Bunkyo University |
Principal Investigator |
佐野 愛子 北海道文教大学, 外国語学部, 准教授 (20738356)
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Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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Keywords | バイリテラシー / バイリンガル教育 / 継承語教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は中島科研〔平成21年度~23年度 基盤研究B 研究課題番号21320096 研究代表者 中島和子〕で収集されたトロント在住の日英バイリンガル児童・生徒の作文力に関わるデータの更なる分析と、このデータにつみ上げる形で縦断的・質的な側面を付与すること、さらに、研究のフィールドを北米以外の地域に拡大することを目的とするものである。26年度中の研究成果としては、10月のトロントにおけるデータ収集(4名の保護者と1名の研究参加者に対するインタビュー調査とトロント市教育委員会関係者・オンタリオ州のESL教員へのインタビュー)と、3月のトロントにおけるデータ収集(1名の保護者に対するインタビュー調査)が挙げられる。このデータの分析はこれから本格的に行うことにしている。 さらに、研究へのフィードバックを11月につくばで開催されたJALTと3月にトロントで開催されたAAALでの研究発表や研究者との交流により得ることができた。AAALの発表成果(作文の構想を練る段階:プレライティングにおける言語交差使用:トランスランゲージング)については現在論文に執筆中であり、また、その後の分析に関する発表を5月に東京で行われる日本語教育学会(継承語学習者のプレライティングストラテジーについて)、6月にデンマークで開催されるIAIMTE(バイリンガルのプレライティングストラテジーとバイリテラシーの発達について),11月にニュージーランドで開かれるSSLWにおいて行う(バイリンガルの作文発達に見られるlexical bundlesについて)ことが決定しており、現在その準備を進めているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は前中島科研に参加した児童・生徒のうち何名かに対して追跡調査を行うこととを目指したものである。より具体的には、前研究と同テーマの作文を再度書いてもらうことと、保護者へのインタビューを通じて前研究後どのように言語使用状況が変化したのかを探ることの2点を目指し、データの数としては各学年1ないし2名程度の参加を目指していた。 現時点で収集できているデータは前研究当時小6だった児童2名、中1だった生徒1名、中2だった生徒2名の計5名の保護者インタビューの部分である。これらのインタビューは相当の時間をかけて行っており、その意味で非常に成果はあったと考えている。 ただし、より低学年だった児童の保護者への追跡調査をする必要があること、また、作文力の変化に関わる調査を行えていない部分に関し、予定よりやや遅れていると考えている。このうち保護者のインタビューについては、当時高学年だった生徒が高等部を卒業してしまうと連絡を取りにくくなることが懸念されたため優先してインタビューを行った。今後低学年の保護者に対してインタビューする予定である。作文力の調査に関しては、時間がかかる調査であって研究参加者に非常に負担がかかる(前研究と同様の条件にするには50分の作文を1週間の間隔で2度行ってもらう必要がある)ため、現在中・高・大学生となって多忙な日々を送っている生徒たちには難しいということがインタビュー調査を通じて明らかになってきた。したがってここは本人に対するインタビューや学校の課題などのために書いた作文をデータとして拠出してもらうなどの代替案を取らなくてはならないかもしれない。 こうした代替案を取ることによって、研究の性質は当初予定していたものと若干変化することが予想されるが、当初より量的研究を目的とはしておらず質的に深く掘り下げる研究を想定していたため大きな障害とはならないと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度はさらに多くの保護者にインタビューをし、その結果を分析することと、作文力の発達に関わるデータ収集をしてその分析をすることが目標となる。 インタビュー調査に関しては前年度行えなかった前研究当時低学年だった児童・生徒の保護者にもインタビューをしていきたいと考えている。作文調査については、インタビュー調査の中でバイリンガル児童・生徒が非常に多忙な毎日を送っていることが明らかになってきたことを踏まえて、前研究と同一の条件で作文を再度書いてもらうとしていた当初の予定を若干変更し、現時点で学校の課題などとして書いている作文をデータとして拠出してもらうなどのほほうに切り替えることとする。これにより直接的な比較はできなくなるなるが、そもそも本研究は質的な調査方法をとることとしていあっため、分析に当たって大きな障害となるものではない。 今年度は予定している学会発表が3件あり、その成果を踏まえて論文の形での発表を目標に研究を進めていく予定である。
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