2014 Fiscal Year Annual Research Report
自動音声処理の発動がカテゴリー知覚の特性表面化に与える影響の調査
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26884051
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
渡丸 嘉菜子 上智大学, 理工学部, 研究員 (40735990)
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Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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Keywords | カテゴリー知覚 / 心理言語学 / 日本語音声 / /ba/-/da/ |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトは、日頃さまざまな音響的特徴を持つ音を耳にしているにも関わらず、音声については、抽象的な範疇に当てはめ、知覚することができる。このようなヒトによる音声知覚について、従来では1.カテゴリー知覚と、2.自動音声処理という観点から独立して研究が行われてきた。本研究の意義は、2つの相互関係に焦点をあて、言語学(音素という言語音声の内在的単位を対象にしているという点)、音響・音声学(具体的な音響的特徴を操作することで連続的刺激音を合成し、実験に用いるという点)、心理学(人を対象とした聴取実験を行うという点)といった学術的な視点から調査した点である。先行研究により、自動音声処理発動時には、カテゴリー知覚の特徴が表面化しないことが示唆されていた。そこで、H26年度はそのような示唆の妥当性について、先行研究の実験を再現することで確認する調査を行った。予備調査に基づき、H26年度の調査では、対象を日本語母語話者による/ba/と/da/の知覚に絞った。実験の結果、予測通り、(1)自動音声処理発動時にはカテゴリー知覚が表面化しないこと、(2)そのような特性は、(英語か日本語か、といった)言語の種類に関わらず、観察されることが分かった。この内容は、学外の研究発表会や博士論文の審査過程において報告された。しかしながら、予想に反し、聴き手の音韻的意識の発達と、それに伴うメタ言語能力がカテゴリー知覚の特性表面化を規定している可能性が明らかになった。実験結果は、博士論文と学術雑誌を通して公表することを検討していたが、上記のような新規の可能性を受け、内容の妥当性・信頼性を保証する観点から、両者ともに一部データの公表を延期することを決定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初は、2つの知覚実験(実験1、実験2)を予定していた。しかし、実験1に関わる研究経過を外部の研究会や博士論文の審査などで報告し、実験方法や方向性について多方面からフィードバックを受けた結果、当初の予想に反した新規の可能性が明らかとなった。そのため、実験1に関わる論文公表と実験2の実施を、H27年度に繰り越すこととした。
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Strategy for Future Research Activity |
H27年度は、実験1の結果の論文公表と、実験2の実施、結果公表を予定している。実験1に関わる論文の公表にあたっては、多方面から受けたフィードバックと新たな予測を元に論文内容を再検討する。その上で、実験2実施のための予備調査を行い、結果を論文等で公表する。現在までの進度から、実験1の論文公表、実験2の実施・公表ともに、完了がH27年度を目途としている。
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