2015 Fiscal Year Annual Research Report
音楽理論と論理学の融合-17世紀イングランドの音楽理論書とラムス主義
Project/Area Number |
26884065
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Research Institution | Showa University of Music |
Principal Investigator |
三城 桜子 昭和音楽大学, 音楽学部, 非常勤講師 (80738120)
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Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2017-03-31
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Keywords | 音楽理論書 / ラムス主義 / イングランド |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、ひきつづき『修辞学二巻』と『音楽の原理』に関する考察を進めてきた。 関連する調査のなかで、ラムス自身が行なった教育改革と、バトラーが提唱した綴り字法とのつながりが示唆された。ラムスは、音楽を含む自由七科の基になるものが文法であり、また母語で学び、書くことは、外国語を学ぶことよりも早く物事の核心に近づけるとして、1562年に、自ら考案した綴り字法を用いて、フランス語のはじめての文法書を著した。一方、バトラーもまた、独自の英語の綴り字法を考案し、英語の文法書を1633 年に著している。両者に共通することは、実際の発音により近い形の綴り字法をめざしたということである。ラムスの場合は、綴り字法が不評だったため、1572年の改訂版『文法』では、従来の綴り字に戻し、内容も大幅に変えている。バトラーの綴り字法もまた、広く用いられることはなかったとされるが、1636年に出版された『音楽の原理』は、この綴り字法を用いて書かれている。綴り字法の考案とその意図の共通性は、バトラーがラムスの実践から直接的に影響を受けている可能性を示している。また、バトラーの18の「音階型」も、この綴り字法で記されている。この「音階型」は、一見、理論上の構築物のようにみえるが、実際の音楽作品の「調」を説明するものであることが明らかになっている。これは、本研究計画において示した仮説、すなわち、17世紀イングランドの理論書とラムス主義の「実践的」側面とのつながりを示唆していることが考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ラムスとバトラーの著作の比較、周辺調査を通じて、ラムスからバトラーへの直接的な影響関係を見出すことができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの成果を論文等の形でまとめていくと同時に、やや遅れているベウルシウスの著作が英国に入った経路の調査ならびにバーズを巡るスコットランドにおけるラムス主義の考察を引き続き進めていく予定である。
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