2014 Fiscal Year Annual Research Report
近世イングランドにおける議会の役割の再検討:数量的手法を中心として
Project/Area Number |
26884066
|
Research Institution | Kanazawa Gakuin University |
Principal Investigator |
仲丸 英起 金沢学院大学, 文学部, 講師 (00736887)
|
Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
|
Keywords | 近世史 / 政治史 / 議会史 / データベース / イギリス史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、国家統治における議会の役割と地方との関係を実証的に分析し、その作業を通じて近世イングランド政治史を再検討することを目的としている。この目的を達成するために、本年度は1.17世紀前半における議員と選挙区との関係、および2.コーンウォル地域における議会と議員との役割の究明に努めた。 1.については、17世紀初頭のイングランドで実施された選挙情報をデータベースとして集約し、既に申請者が構築していた16世紀後半のデータベースとの接合を行った。その結果、選挙区のタイプによって選出される議員の性質に差異があり、それゆえ折々の選挙に作用する要因の種類および強度も異なっていたということ、さらにパトロンや政府のエージェントといった外部からの働きかけと各選挙区の自律性の均衡が、ある時期まではその時々の中央の政治状況とかなり密接に結び付いていたことが、当該期の全体的動向として明らかになった。本研究成果については、英語論文として国際誌への投稿を準備中である。 2.については、1.で構築したデータベースにもとづき、下院議員の選出という面においてコーンウォルが他地域より圧倒的に外部権力の影響を受けやすい状況にあったものの、初期ステュアート朝期に入ると地域社会と外部権力との軋轢は高まっていったという全体的構造を解明した。次に、この結果をミクロ政治史の手法によりリスカード市を中心として検討した結果、初期ステュアート朝期における選挙には都市内外の様々な要因がそれぞれ影響を与えていた状況を明らかにする一方で、選挙を主催する都市自治体内で実権を掌握していた者たちが戦略的に外部勢力を利用していたことも実証できた。本研究成果については、それぞれ国内の論集および学術雑誌に掲載予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の当初の課題として挙げた3点のうち、2点までが具体的な研究成果として実を結んでいる。また、本研究の成果は、既に学術雑誌および論集に論文として掲載が決定している。それゆえ、研究成果の社会への還元は一定程度進捗していると考えられる。 また本年度中に海外(イギリス)における史料調査を1度実施し、本研究における課題解決のための史料調査を実施することもできた。これにより、今後の研究の推進にあたっての準備も整っていると思われる。 以上から、本研究はおおむね順調に進展しているといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度においては、1620年代後半の強制借用金支払い拒否運動に着目し、本年度に構築したデータベースにもとづいて同運動全体の性格を明らかにするとともに、個別の事例研究を通じてこの運動の中で議員が中央と地方との関係において果たしていた役割を検討する。具体的には、1.強制借用金支払い拒否を表明した議員についての全体的な動向を分析した上で、2.特定の議員についての事例研究を行う。 1.強制借用金の支払い拒否を表明した議員はその全員が特定されている。しかし、彼らが自身の選挙区とどのような関係にあり、また各地域社会に説明責任を果たしていたのかを検証しようとした研究は、現在まで現れていない。そこで本年度に構築したデータベースを利用し、これらの議員たちがどのような規模の選挙区から選出され、またどの程度選挙区を移動していたのかを包括的に検証する。これにより、支払い拒否運動の背景にあった各地域の利害と、議員の担っていた責務を解明する。 2.強制借用金の支払いを拒否し収監された議員には、ジョン・ハムデンとジョン・エリオットが含まれている。両者については、これまで国王に反抗した急進的議員という位置づけがなされてきた。しかしその選出区であるバッキンガムシャやコーンウォルといった地域との関係から、彼らの活動を検討しようとした研究は少ない。そこで、本年度の成果も生かしつつ、強制借用金の支払い拒否という行為が中央と地方の関係においてどのような意味を有していたのかを、イギリスの地方文書館所蔵の史料などで収集する史料を利用して究明する。
|