2014 Fiscal Year Annual Research Report
新出土文献による中国古代思想史の再構築―楚国故事を中心に―
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26884069
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
草野 友子 京都産業大学, 文化学部, 講師 (90733402)
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Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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Keywords | 中国古代思想史 / 新出土文献 / 上海博物館蔵戦国楚竹書 / 楚国故事 / 国際情報交換 / 中国:台湾 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.新出土文献の釈読と検討 本年度は、上博楚簡(上海博物館蔵戦国楚竹書)の楚国故事の中の二篇、『邦人不称』と『陳公治兵』を中心に研究を進めた。『邦人不称』は、春秋時代の楚の賢臣、葉公子高に関する故事である。まず、竹簡の排列・綴合・帰属の問題について検討した上で本篇の釈読を提示し、続いて本篇に見られるキーワード「不称」を手がかりに本篇の全体構成と性質を明らかにした。『陳公治兵』は、楚王が陳公に軍隊を整えるよう要請したという内容であり、楚の軍事の実態を窺い知ることができる文献である。本篇は整理者の竹簡排列に問題があるため、竹簡の排列案を検討して可能な限り復原を試みた。その結果、本篇は、楚の先王・先君の戦歴、楚王と陳公との対話、具体的な兵法の三つに分類できることが明らかとなった。 2.学会・研究会での口頭発表 2014年12月、中国出土文献研究会の第56回研究会(於大阪大学)において、前稿論文「上博楚簡《邦人不稱》的“不稱”」(2014年5月に台湾で行われた「2014年國立高雄餐旅大學應用日語系「觀光、言語、文學」國際學術研討會」にて口頭発表、同年10月刊行の論文集に収録)の増補改訂版である「上博楚簡『邦人不称』の全体構成―「不称」を手がかりとして―」を発表した。また、2015年3月に台湾・致理技術学院で開催された「「漢學」國際學術研討會」(東亞漢學者之會主催)において「上博楚簡『陳公治兵』の基礎的検討」と題して口頭発表を行った。 3.学術調査報告 2014年9月には、甘粛省に学術調査に赴き、秦代・漢代の簡牘資料(いわゆる西北簡)の実見調査を行った。その際、現地研究者と簡牘の整理・保存の状況や西北簡の性質などについて会談し、その内容を報告書としてまとめた(中国出土文献研究会「甘粛省出土簡牘調査報告」所収、草野友子「甘粛省文物考古研究所・甘粛簡牘博物館での会談」)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、当初の予定通り、上博楚簡の第九分冊所収の『邦人不称』・『陳公治兵』の論文執筆、および学会・研究会での口頭発表を行い、また『霊王遂申』についても先行研究をまとめることができたため、研究計画はおおむね順調である。 研究成果については、すでに研究雑誌に投稿済みであるが、当該年度内に掲載には至らなかった。また、本年度中に上博楚簡の第十分冊および清華簡(清華大学蔵戦国竹簡)の第五分冊が公開されなかったため、それらについての研究は来年度への持ち越しとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、上博楚簡の楚国故事を中心に研究を進めるが、各文献の個別の研究にとどまらず、文献全体を総合的に検討して、その性質を明らかにしていきたいと考えている。2015年度には上博楚簡の第十分冊や、清華簡の第五分冊などの関連資料が公開されるとみられ、それらについても研究の対象としたい。 また、楚国故事の中には、難読文字や竹簡の排列・分類に問題があるものが含まれているため、竹簡の所蔵先や研究機関に赴いて、実見調査と現地研究者との学術交流を行うことを計画している。研究成果については、国内外の学会・研究会において随時発表し、専門家との意見交換を通して、研究の精度を高めていきたい。
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