2014 Fiscal Year Annual Research Report
戦後政治史のなかの主権と人権の創発と定着に関する研究
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26884071
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
林 尚之 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 研究員 (20733273)
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Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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Keywords | 国際法思想 / 日米安保 / 国連中心主義 / 国体論 / 非常大権 / 戦後改憲思想 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、戦前の国際法思想、安全保障論の研究を踏まえた日米安保体制の研究、戦前の改憲問題の文脈を踏まえた戦後改憲論(運動)の研究を行った。 【近代日本の安全保障政策構想と日米安保体制に関する研究】日本外交の原則である国連中心主義、 日米安保中心主義の確立過程、その思想的背景を検討することを通じて、戦後日本の主権国家とは何であるのかを問題にした。このことを、憲法制定議会における憲法第9条と国連加盟をめぐる政府見解、平和条約・安保条約締結にむけての準備過程における外務省の基本方針及び日本の日米安全保障条約案にみられる安全保障構想、国連加盟における憲法論議を分析することで試みた。 憲法制定議会において、憲法第9条の非武装平和主義が堅持される前提条件として、国連の集団安全保障措置に基づいて日本の安全保障を確保することが指向されていたこと、そして、日本において独立後の、再軍備=自主防衛力の整備は、日米安保体制を効果的に補完する潜在的自主防衛力として位置づけられ、必要最小限度の戦力保持にとどめることができたことが明らかになった。 【戦前戦後改憲論に関する研究】戦後改憲思想・運動の歴史に関する先行研究の整理・検討を行った上で、国民精神文化研究所所員井上孚麿と大串兎代夫の国体論を検討することで、戦時期の非常大権論と戦後の改憲思想との連続性を明らかにした。さらに、非常大権論に依拠してポツダム宣言受諾、日本国憲法制定を帝国憲法の法理から説明していたことを明らかにし、その点から帝国憲法の法的有効性が戦後においても継続しているという前提を改憲思想が共有していたという見解を提示した。 以上の研究成果を学会誌での論文掲載、学会報告という形で公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究計画では、①「近代日本の安全保障政策構想と日米安保体制に関する研究」②「戦前戦後改憲論に関する研究」を二つの目標に掲げていたが、①②ともに完了することができた。国会図書館憲政資料室での資料調査・収集が頗る捗り、研究計画を順調に進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究成果の公表については、①は『立命館文学』に掲載されたが、②に関しては投稿時期が遅れたため、現在掲載に至っていない。史料の収集と読み込みに時間をかけたことで、論文執筆が年度末になり、成果の公表が遅れてしまったことが要因である。次年度以降はこの点を反省して、史料の収集と史料の読解、分析を早い時期に行うなどより計画的に研究を進め、学会報告や学会誌への投稿を通じて、研究成果の発信を積極的に行っていきたい。
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