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2014 Fiscal Year Annual Research Report

中世の流通経済と渡来銭受容の影響

Research Project

Project/Area Number 26884078
Research InstitutionResearch Institute for Humanity and Nature

Principal Investigator

伊藤 啓介  総合地球環境学研究所, 研究部, プロジェクト研究員 (10733933)

Project Period (FY) 2014-08-29 – 2016-03-31
Keywords貨幣史 / 流通史 / 中世手形文書 / 貨幣論 / 中世信用論
Outline of Annual Research Achievements

本研究は、中世日本貨幣経済の特徴である渡来銭の流通の開始が貨幣経済・流通経済に与えた影響を明らかにし、14世紀前後の流通経済の成長を促進したことを解明することを目的とする。そのために、価値所蔵手段としての受容の先行や、「米の売買のための貨幣」としての受容といった渡来銭受容のありようを示す史料を集め、それを中世の現実に沿った形であらたに解釈・検討し、渡来銭受容が中世日本の社会にもたらした変化と影響を明らかにすることをめざすものである。
本年度はまず、渡来銭の受容がすすんだ13世紀、渡来銭受容自体と並行して、広く社会で小資本の蓄積があったことを史料から具体的に明らかにして、両者の関連性を指摘した。
次に、14世紀の手形文書の信用が、手形の支払人の実績と手形の販売者の財力などにささえられていたことを明らかにし、商人たちの商業活動を通じて蓄積された財力にもとづく信用の存在を指摘した。
最後に、14世紀の手形文書の信用が商人たちの蓄積された財力に支えられていたことと、11世紀の手形文書の信用が当時の国家的な財政機構に支えられていたことととを比較し、14世紀以降のいわゆる日本中世における商業の発展の前提としての、社会における流通小資本の蓄積が12~14世紀に行われたことを指摘した。
この時期は渡来銭流通の受容~拡大期と重なる。渡来銭はそれ以前に流通していた米などの商品貨幣に比して、価値貯蔵手段機能の点で優れる。とすると、渡来銭流通と流通資本の蓄積との間には明確な関係性があることが明らかとなる
以上が今年度の研究実績である。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

初年度は12世紀以降の流通小資本の出現と渡来銭受容について研究した。まず史料面での成果から述べる。14世紀の中世手形文書の信用が、支払人の商業収入とそれによって蓄積された財産であることを実証しうる史料と、13世紀における小資本の出現を示す史料をそろえた。さらに13世紀において、荘園の代官など徴税機構に寄生する人物が、土倉・借上といった金融業を営んでいる様子がわかる史料を発見した。これにより、国家的・荘園制的徴税機構のなかから流通資本が発展してきた、といままで理論のみで説明されてきた流通資本発展の要因を、実証的に説明し、かつその時期を詳細に分析することが可能となった。
次に作業状況を述べる。論文の執筆作業に入っている。勉強会での報告などで問題点の洗い出しを行い、骨子部分は完成している。文章化と先行研究への位置付けなどについての作業中である。今後早い段階で査読つき雑誌への投稿を行い、採用・掲載を目指す。
なお、この間、二年目の渡来銭受容に伴う米市場の活性化につながる作業として、史料の検索も行った。15世紀の近江の荘園代官が京都や地元の市場の米相場を比較している史料を発見しており、議論を進めるにあたって重要な起点となりうる。
以上、年度中に論文投稿に至らなかった点は不満だが、論文化のめどは立っており、二年目の分の史料検索が進んでいることをみても、本研究はおおむね順調に進展している、と評価できる。

Strategy for Future Research Activity

(初年度分について)
初年度に作成する予定だった、価値貯蔵機能にすぐれた渡来銭の受容とそれによる流通小資本の蓄積という社会への影響にかかわる論文は現状骨子ができており、そのまま作成作業をつづける。9月に古文書学会(岡山)での発表を予定しておりその場で成果を発表する。順調にいけばそのまま論文化される予定である。
(二年目分について)
二年目に予定されていた渡来銭受容による米市場の活性化の論文については、有力とはいえ、対象の時期である14世紀より新しい15世紀の史料しか見つかっていない状況である。だがこのことは本研究の応募時にも書いたように、当初から予想していたことでもある。 解決策は以下の通りである。断片的な史料ではあるが、14世紀ころの米市場活性化の状況証拠は存在するので、15世紀の状況を14世紀にさかのぼって適用する形で論じることとなる。 とはいえ、より確実な史料を探索する必要があることはいうまでもない。よって今後の方策は以下の通りとする。
9~10月ころまでは東京大学史料編纂所などで、史料の検索と収集を行う。そこまでの史料収集作業の結果によらず、11月からは論文化の作業に入る。論文化・雑誌投稿の時期は1月末をめざす。多少難航したとしても、年度内の完成・投稿は十分可能なスケジュールである。
論文二本を並行して作業することになるが、スケジュールには余裕があり、期間内に完了し、成果を挙げることは十分に可能である。

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Published: 2016-06-01  

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