• Search Research Projects
  • Search Researchers
  • How to Use
  1. Back to project page

2014 Fiscal Year Annual Research Report

刑法における故意概念の明確化―「未必の故意」の再検討を通して―

Research Project

Project/Area Number 26885001
Research InstitutionHokkaido University

Principal Investigator

佐藤 結美  北海道大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 助教 (50733119)

Project Period (FY) 2014-08-29 – 2016-03-31
Keywords刑法 / 故意概念 / 未必の故意 / 処罰範囲の明確化
Outline of Annual Research Achievements

本研究は、従来から議論の対象となってきた「未必の故意」の概念と、「未必の故意」と「認識ある過失」の限界を明らかにした上で、故意犯としての妥当な処罰範囲を検討するものである。また、従来あまり議論されてこなかった「重大な過失」の意義も明らかにすることを目的とする。
以上の研究目的を達成するために、平成26年度はフランス刑法を対象として比較法研究を行った。フランス刑法では、過失が「認識ある過失」と「認識なき過失」に二分されているという点では日本刑法と共通している一方で、「未必の故意」を「認識ある過失」として扱うという相違点がある。日独刑法学説とは異なるこれらの点は、認識説と認容説とで争われてきた故意の概念を明確化するに資すると考え、フランス刑法における故意と過失の概念整理を行い、次のような知見を得た。
フランス刑法では故意が肯定されるためには結果の予見とその意欲が必要である。多くの判例・学説は、行為者が損害結果の発生を全く望んでおらず、単に結果が予見可能であった場合を「未必の故意」と呼び、過失と同じものであると解している。そして現行刑法121-3条2項は未必の故意につき、「意図的に他人を危険にさらすこと」と定義することで、通常の故意に近い重大な過失であると位置付けている。このように、未必の故意も過失(特に認識ある過失)も、注意義務の重大な違反がありながら、行為者が意欲した以上の結果が発生した場合を指している。ここでいう「意欲」は確定的なものである必要があるのか、それとも「結果が発生しても構わない」という程度の認容であるのかは検討を要する。しかし、「危険の存在を確定的に認識した上で他人を危険にさらす」という行為は、事実認定レベルでは「結果の発生を認識していた」と解される可能性が否定できない。このような心理状態を過失として位置付ける発想により、故意犯処罰の限定がなされている。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

研究対象が故意と過失の限界という広いテーマであるため、当初の研究計画の全てを実行するには至っていないが、故意概念の再検討の前提となる概念の整理はできたと考えられるため。

Strategy for Future Research Activity

平成27年度は、立法背景も含めたフランス刑法学説の歴史的経緯に遡り、現在の学説の位置づけを明らかにした上で、故意概念の再検討を図る。また、故意概念と目的犯との関係も検討すべきであると考えられる。

URL: 

Published: 2016-06-01  

Information User Guide FAQ News Terms of Use Attribution of KAKENHI

Powered by NII kakenhi