2014 Fiscal Year Annual Research Report
インターネット時代の著作権と表現の自由の調整をめぐる立法と司法の役割
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26885002
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
比良 友佳理 北海道大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 助教 (40733077)
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Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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Keywords | 著作権 / 憲法 / 表現の自由 / インターネット / 知的財産法 / 著作権リフォーム / 孤児著作物 / フェア・ユース |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、著作権と憲法上の表現の自由の衝突問題について、司法(裁判所)と立法(議会)がそれぞれ果たしうる役割を解明するものであり、(1)表現の自由を配慮したインターネット時代の著作権リフォームを検討するとともに、(2)著作権侵害訴訟の法解釈において表現の自由がどこまで配慮されてきたかを考察するものである。 平成26年度は、主に前者の課題に取り組むべく、著作権と表現の自由に関する日本法およびアメリカ法の文献の調査と収集、分析を行った。特に憲法分野の基本書、概説書については主要なものを揃えることができた。さらに、法学書のみならず文化論、コンテンツ論、インターネット関連書籍にも幅広く当たり、インターネット、デジタル時代に対応した著作権リフォーム論を検討する上での基本となる情報収集に務めた。表現技術、通信技術が発達するにつれ、著作権法制度もこれまでの歴史で繰り返し変化してきた。インターネット時代を迎えた現在、表現の自由(特にユーザーの自由)との間でバランスの採れた著作権制度の整備が急務となっている。 入手した資料は利用しやすいようリスト化しまとめ、今後、目標としている論文執筆へ向けて、研究ノートを作成した。 それらに加えて、随時開催されていた北海道大学知的財産法研究会に参加し、国内外の研究者による研究報告を通じて、最新の情報に触れることができた。ま平成26年度より憲法理論研究会に入会し、憲法分野の研究者との交流及び情報収集に務めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は、当初の予定通り、法学文献以外のものも含むインターネット、デジタル技術関連の書籍を中心に幅広く文献収集を行うことができた。また、憲法、人権に関する文献収集も進める事ができた。これらの作業で得られた知見を論文にまとめる作業はまだ残されているが、研究を遂行する上での環境面は当初の予定通り整ったといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、著作権侵害訴訟において、裁判所が法解釈を通じてどれだけ表現の自由に配慮を示してきたかを検証する。これまで我が国の著作権侵害訴訟の判決文において、憲法上の表現の自由と著作権の関係について明示的に判断を下したものは管見の限り存在しない。しかし、既存の条文を柔軟に解釈するなどの形で、著作権に対し間接的に表現の自由の価値を尊重したと思われるものは存在する。例えば他人の書の掛け軸がカタログ写真に小さく写り込んだ事案において、東京地判平成11.10.27判時1701号157頁[雪月花一審]、東京高判平成14.2.18平成11年(ネ)5641号[雪月花二審]は書の創作的表現が写真の中に再現されていないとして著作権侵害を否定した。写り込みに関する明文規定を欠いていた当時、類似性要件を柔軟に解釈することで、著作権行使が利用者側の表現の自由を害することがないよう配慮した判決と評価できる。同様の位置づけが可能な裁判例を網羅的に調査し、侵害訴訟中の司法の調整機関としての役割と可能性を明らかにする作業に取り組みたい。 平成27年度末にはこれまでで得られた成果をまとめた論文を公刊することを目指す。
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Research Products
(1 results)