2014 Fiscal Year Annual Research Report
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26885020
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
真田 原行 東京大学, 総合文化研究科, 特任研究員 (40734041)
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Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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Keywords | 認知心理学 / 注意 / 事象関連電位 / ワーキングメモリ |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、研究計画における主題「物体表象の維持」に関連し、ワーキングメモリ (以下 WM) 保持機能の機序解明研究を行った。 形成された物体表象の維持には、WMが重要な役割を果たすことが示唆されている。またこれまで、WM情報保持の機序を注意が担うとする理論が広く知られてきた。この理論は、空間WM保持期間の間注意の効果が観察されるという証拠に裏付けられている (Awh & Jonides, 2001)。しかし近年この注意効果を追試できない報告もあり、WM保持に注意が役割を持つのか再検討の必要があった (Belopolsky & Theeuwes, 2009; Chan et al. 2009)。よって本研究では空間WM保持に注意が役割を持つか解明するため、行動実験 とERP実験を行った。 まず研究1では、空間WM保持中に注意効果が観察されるか行動指標を用いて確かめた。結果として注意効果は検出されず、これは空間WM保持に注意が役割を持たない可能性を示唆した。 しかし単に研究1の行動指標が検出力不足であった可能性も残るため、その効果をより直接的に観察できるERP指標を用いて検討を行った (研究2)。ただしもし注意効果が観察された場合でも、注意が空間WM保持に積極的役割を持つか、それとも単に付随的なものかを判別する必要がある。そこで空間WM保持中に視覚探索を行い、注意を剥奪した後でも注意効果が残るか検討した。結果、まずERP指標により注意効果が観察された。さらにこの効果は、注意を剥奪した場合にも維持された。すなわち、注意が単に付随的なものではなく、保持に積極的役割を持つことを示唆する。 まとめると、本研究はWM保持における注意の積極的な役割を示唆した。この成果は、WM機序の解明においてさらには物体表象維持メカニズムの理解において、重要な土台を提出するものと言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はWM保持における注意の役割解明に関して重要な知見を得ることができた。またこの研究内容をすでに論文として執筆し、現在は投稿準備中である。この成果は、物体表象の維持メカニズム理解に対し、将来研究を進めていくうえでの重要な土台を提出するものである。これらの点において本年度の研究実績としてはおおむね順調であったと言える。しかしながら研究計画書で予定していたもう一つの主題、「物体表象の切り出し」メカニズム研究については、実験計画の再考等により実際の実験は現在準備中である。この研究内容については平成27年度初旬より早急に実験を実施する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、「物体表象の切り出しと形成」の主題に関して1つの研究を行い(計画書における研究2)、また「形成された表象の維持」に関する2つの研究を行う(計画書における研究3・4)。 研究2では、認識すべきターゲット物体の上に、重複した妨害物体の認識は抑制されるのか解明する。方法としてはERPプローブ法を用いる。 研究3では、物体表象の維持において、その特徴情報と空間情報が結合されて認識されているのか否かを解明する。方法としてはKahneman et al. (1992)を参考にした行動実験を用いる (Object Reviewing Paradigm)。 研究4では、研究3と同じ問いに対して、現実場面により近い課題設定を用いて検討を行う。Object Reviewing Paradigmでは、物体移動時にその特徴情報が隠されるが、現実ではそのようなケースは稀である。近年では物体の特徴情報を呈示したまま物体追跡させるMultiple Identity Tracking課題が開発されており、研究4ではこの課題を用いる。
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