2014 Fiscal Year Annual Research Report
組織内における双方向的な戦略的コミュニケーションモデルの構築
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26885033
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Research Institution | National Graduate Institute for Policy Studies |
Principal Investigator |
小川 博雅 政策研究大学院大学, 政策研究科, 助教授 (00738958)
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Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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Keywords | チープトーク / 双方向コミュニケーション |
Outline of Annual Research Achievements |
当初の研究計画に従い、初年度は既存研究での組織内コミュニケーションのモデルを調査し本研究のベースとすべき理論モデルを決定するとともに、双方向的なコミュニケーションを分析するためのモデル拡張の方法について検討を行った。 1)ベースとする理論モデルの選択: Alonsoらの分権化モデルとHarrisらの権限委譲モデルを候補として、本研究のベースとすべき理論モデルを検討した。検討の結果、前者のモデルをベースとした拡張が可能であると判断した。後者のモデルについては、本研究の目的に沿った拡張が困難であると判断した。 2)具体的なモデル構築作業: 1)のモデルをベースとして、組織のメンバーがお互いにメッセージを複数回伝達し合うことができるように拡張を行った。元のモデルから一般的なかたちで拡張する場合、均衡の特定および均衡分析から得られる含意の導出が困難であると判断し、メンバーが伝達可能なメッセージの種類が2種類に制約されている状況に限定して拡張を行い分析を進めた。研究計画に記したように、この制約はより含意の分析を鋭く行うためのもので、コミュニケーションの双方向性を考慮に入れて組織のあり方を議論するという本研究の趣旨から逸脱するものではない。 このモデルでは、組織のメンバーがお互いが伝達したメッセージを観察しないでコミュニケーションを行うケースと、観察しながらコミュニケーションを進めるケースのふたつを比較することで、コミュニケーションが双方向的である場合に伝達可能な情報量への影響を調べることができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はおおむね当初の研究計画どおりの成果が得られた。本年度に構築した理論モデルに基づいて分析を行うことで、次年度の研究計画も当初の計画どおりに遂行していけると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
1)各権限配置パターンの下で伝達可能な情報量の分析:構築したモデルを用いて、お互いのメッセージが観察可能な場合とそうでない場合での伝達可能な情報量について調べる。具体的な方法としては、集権化された組織と分権化された組織において、それぞれ最も効率性の高い均衡を見つけ、そこで伝達される情報量について調べる。さらに伝達される情報量がどのようなパラメータに依存して決定されるのかを明らかにするために、各パラメータに関する比較静学を行なう。比較静学は協調の重要性やインセンティブのバイアスの大きさがその対象となる。以上の結果と既存研究の結果と比較し、相違点が発生する箇所を見つけ、それが発生した直観的理由について分析を進める。
2)権限配置パターン間の比較および含意の導出:1)の研究成果に基づき、コミュニケーションの双方向性を考慮した場合、いつどの権限配置が最適になるのかを調べ、既存の権限配置に関する研究結果とどのような差異が生じたかについて調べる。また、分析結果を用いて、現実の組織設計に対する含意を探る。具体的には、双方向的なコミュニケーションはどんな権限配置の下で重要な意味を持つのか、組織はどのようなときに双方向コミュニケーションを促すべきなのか、などの問いについて理論的な観点から回答を行なう。また、得られた研究成果を権限配置以外の組織の経済学における論点やそのほかの応用経済学分野の論点と関連付けることができるかどうかも検討する。
3)研究報告の活用および論文執筆:国内外の会議での報告の機会を作り、得られたフィードバックを研究に活用する。研究成果をとりまとめ論文を執筆し、国際的な学術誌へ投稿を行なう。
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