2014 Fiscal Year Annual Research Report
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26885037
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高橋 陽一 京都大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (10737399)
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Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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Keywords | 会社法 / 多重代表訴訟 / 株主代表訴訟 / 内部統制システム / 子会社管理 / コーポレート・ガバナンス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、グループ経営が広く行われている昨今の状況にかんがみ、企業グル―プにおける適切なコーポレート・ガバナンスを確保するための諸制度に関して、その機能と限界を分析し、全体として適切な規律づけが行われるような仕組みについて考察・提言することを目的とする。 初年度である本年度は、①多重代表訴訟制度、および②企業集団における内部統制システム(親会社による子会社管理)に焦点を当て、アメリカ法の状況も踏まえて、適切な制度設計のあり方を検討した。①の検討の前提として、通常の代表訴訟制度の意義や実態についても考察を行った。具体的な手法としては、アメリカの判例や学説を調査・分析し、わが国の問題状況や議論状況との比較・検討を行った。さらに、平成26年会社改正に際しての議論を整理し、各制度の意義と問題点について分析を加えた。 その結果、①については、特段の問題のない限り、通常の代表訴訟制度と同様に広く認められるべきであるとの結論に至った。②については、規律づけの手段として一定程度有効ではあるが、責任追及段階においては、親会社役員に広い裁量が認められることから限界があり、責任関係の処理の面でも問題を有することが明らかとなった。したがって、本研究の立場からは、平成26年改正会社法の内容には、多重代表訴訟制度の認められる場面が狭すぎるなど、問題が少なくない。 上記の研究成果は、これまでの研究成果とあわせて単行書籍にまとめ、平成27年1月に出版・公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
多重代表訴訟制度および親会社の子会社管理に関して研究を進め、これまでの研究成果とあわせて、単行書籍として出版・公表することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、日本私法学会における個別報告を行う予定であり、それに向けて、新たな議論や判例をフォローしつつ、検討を深める。また、証券訴訟など、会社法上の制度以外の諸制度についても、調査・分析を行う。さらに、役員の義務や責任のあり方、および株主代表訴訟制度の意義といった、基礎的な問題にも積極的に取り組みたい。
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