2014 Fiscal Year Annual Research Report
民主主義体制の国際的推進に関する理論枠組みの構築とその実証分析
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26885041
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
湯川 拓 大阪大学, 国際公共政策研究科, 准教授 (80728775)
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Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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Keywords | 民主化 / 選挙監視 / クーデタ / 援助 / 制裁 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、①理論枠組みの構築、②選挙監視についてのデータセットの構築、③アフリカの選挙監視についてのケーススタディーの三点を主に行った。 ①理論枠組みの構築については本研究プロジェクトの骨子となるものであるが、これは分析枠組みの提示から観察可能な形での仮説の導出まで終わらせることができた。②の選挙監視についてのデータセットの構築については、主に冷戦後に行われた選挙について選挙監視の有無や結果、それを受けての制裁の有無などを網羅的に一つのデータセットにまとめる作業が完了した。最後に、③のアフリカの選挙監視についてのケーススタディーについては現在進行中ではあるが、選挙監視団のレポートの調査や二次文献を通しての実態の把握を進めている。以上が平成26年度に行った作業であるが、特に理論枠組みの構築が無事に完了したことは重要である。これにより、本研究プロジェクトにおける「主張」が定まったことになる。 以上の研究を通して、現在は理論部を中核とした論文を執筆中である。なお、同論文は平成26年6月に神戸大学IR研究会において行った「選挙監視は民主化を促すか―民主主義の「国際水準」に関する情報の観点から」という報告、並びに、同年7月に東京大学駒場国際政治ワークショップにおいて行った「選挙監視の「効果」についての理論的研究」という報告を土台としている。完成し次第、査読付き学術雑誌に投稿予定である。 また、並行して東南アジア諸国についての研究も行い、平成26年12月には「ASEANにおける経済と安全保障の連関」と題した報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね順調に進展していると判断できることの最大の背景は、理論枠組みを構築することに成功し、それを論文にまとめるという作業がほぼ終わったという点にある。理論枠組みの構築は「着想に恵まれるかどうか」という点が重要であり、必ずしも時間をかければそれに応じた成果が上がるものではない。その点、プロジェクトの比較的早期に軸となる発想に恵まれたことは、研究を進めていくうえで非常に大きいと考えられる。 また、選挙監視ならびに制裁についてのデータセットが完了したことも重要である。平成26年度はこれらの「準備作業」とも言うべき部分が一定程度の比重を占めざるを得なかったが、27年度にはこれを活用した計量分析などを予定している。 また、上記のように理論部を論文という形でほぼまとめ終えることができたのは順調な進展である。現在はそれを踏まえて投稿するための最終段階に入っている。したがって、プロジェクト初年度でまずは理論部を核にした論文がほぼ完成と呼べる段階まで到達したことは、今後の土台を提供してくれるという意味で重要である。計量分析やシミュレーション分析などの応用研究を、その基に行うことができるからである。 以上のようなことから、現在までの達成度としては、「おおむね順調に進展している」と判断することができる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究方針としては、第一に仕上げにかかっている論文を完成させ、査読付き学術雑誌に投稿することである。それによってまずは本研究プロジェクトの理論部の提示に一区切りがつくことになる。 その後、まずはアフリカをケースとした論文を執筆することを検討している。そのためには冷戦後のアフリカで行われた選挙、それに対する国際的な選挙監視団の評価、それを受けての政府の対応あるいは欧米からの制裁の有無、などの事実関係について一次資料と二次資料を用いた把握が必要となる。一次資料としては、選挙監視団のレポートの収集、ならびに実際に選挙監視を行った主体へのインタビューを予定している。それらの資料を基にして、本プロジェクトの理論枠組みと接合させる形で、アフリカのケーススタディーをメインとした論文を執筆する予定である。 以上の研究はアフリカに特化したケーススタディーであるが、それと並行して、アフリカに限らず選挙監視一般を対象として本プロジェクトの理論仮説を検証する、計量分析を実施することも予定している。データセットについては既に構築済みであるために、必要な作業はそれほどは多くはない。ただ、この論文については仮説の提示においてコンピュータ・シミュレーションを用いて、仮説自体をより精緻化することを検討している。 最後に、本研究プロジェクトでは選挙監視に加えてクーデタに対する国際社会の対応も分析したいと考えている。ただ、これについてはデータセットの構築から始める必要がある。上記の三つの論文が完成し次第、取り組んでいきたいと考えている。
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