2014 Fiscal Year Annual Research Report
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26885051
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
春日川 路子 香川大学, 法学部, 講師 (50735537)
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Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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Keywords | 給付の訴え |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、民事訴訟における将来の権利の取扱いに関する問題の中でも、将来の給付の訴えの適法性について重点的に研究した。特に、将来の給付の訴えの適法性が問題となった重要判例を、「なぜ、どのような要素があれば適法となるのか」との観点から検討することを試みた。 まず、一回的給付を求める権利についてではあるが、履行期未到来の敷金の返還を求める訴えの適法性およびそれを判断する要素を検討した論文を、所属する機関が発行する雑誌である香川法学第34巻1・2号43頁において発表した。このなかで、敷金返還を求める訴えのような一回的給付を求める将来の給付の訴えの適法性を判断するために、請求の特定性があること、条件が成就する可能性があること、主文のとおりに請求権が具体化することとの要件を定立し、具体的事案を検討した。さらにこの論文についての報告を、2015年2月7日(土)に開催された所属する研究機関内の研究会(香川大学民事手続法研究会)において行った。他の民事訴訟法研究者や法律実務家から、研究につき貴重なご教示を賜った。 続いて、共有者間において将来発生する不当利得の返還を将来の給付の訴えによって請求した事件である、平成24年12月21日集民242号117頁の判例評釈を執筆した。この評釈のなかで、日本法上将来給付が許容される可能性の高い事案やドイツ法上の規定の内容にも言及し、将来にわたって継続する給付を求める訴えはいかなる要素があれば適法となるのかとの問いの一端を明らかにできた。これは香川法学第34巻第3・4号(平成27年3月20日発行)81頁に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の現在までの達成度は数値にして50%であり、計画の半分は達成できたと考えている。その理由として、当初今年度行う研究に位置づけられていた将来の給付の訴えの適法性について、一回的給付の場合と反復継続する給付の場合に分けた形ではあったが、具体的に検討できたことが挙げられる。またそれらの成果を、論文や判例評釈、研究報告という形で外部に発表できたことも挙げられる。だが特に研究報告の場で先輩ともいうべき他の研究者・法律実務家から、これまでの研究結果について疑問やさらに研究して明確にすべき問題があることを指摘された。この指摘を真摯に受け止め、これまでの研究の不十分な点を継続して研究することにより、今後は自己満足にとどまらない研究をする所存である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後まずは、請求権が存在することの確認の訴えの機能および当該確認の訴えが適用される範囲の明確化・具体化について研究する。その後、将来給付と請求権の確認という二つの訴えの関係の明確化を目指す。 推進方法として、まずは重要な裁判例の検討が挙げられる。具体的には、将来発生する敷金返還請求権を条件付の権利と捉えて、そのような敷金返還請求権が存在することの確認を求める訴えを適法と判断した最判平成11年1月21日を検討する。将来発生する権利と条件付き権利を区別する要素の特定を目指す。その後、今年度までに行った将来発生する敷金の返還を求める将来の給付の訴えの適法性に関する研究と比較することで、将来の給付の訴えと請求権の確認の訴えはどのような関係に立つのか、給付の訴えが優先されるのか、それとも原告が選択できるのか、との問題を明らかにする。 この領域でも、ドイツ法上の裁判例および学説の分析を行い、現行の日本法と比較する。ドイツには参考となる裁判例がある。交通事故等の被害者の被扶養者が事故の加害者に対して有する定期金方式の損害賠償請求権(BGB844条2項)に基づいて将来にわたって損害賠償を請求した事案において、ドイツ通常最高裁は当該給付において将来給付が許容される部分と確認により請求権の確認ができるにとどまる部分があると判断している。こうした取り扱いの違いを生じさせる要素を明らかすれば、日本法上の将来給付と請求権の確認の関係を検討する際の参考になる。 研究を進める前提として、国内外の民事訴訟法に関する資料を広く収集する必要がある。今年度も書籍を購入したり複写に赴いたが、今後も同様の方法で引き続き資料を収集する。複写に赴く機関として具体的には東京の中央大学、大阪の大阪大学やドイツのケルン大学またはミュンヘン大学を予定している。また雑誌への論文の投稿によって、研究に客観的な締め切りを設ける。
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Research Products
(2 results)