2014 Fiscal Year Annual Research Report
アートマネジメント人材育成におけるポートフォリオを活用した学習評価システムの研究
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26885057
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
志村 聖子 九州大学, 芸術工学研究科(研究院), 研究員 (30736765)
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Project Period (FY) |
2014-08-29 – 2016-03-31
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Keywords | アートマネジメント人材育成 / ポートフォリオ / 体験型学習 / 省察 / 自己評価 / キャリア教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、大学等高等教育機関においてアートマネジメント教育を受ける学生の長期的なキャリア育成のための取り組みの一策として、アートマネジメント教育における学習と評価を有機的に関連させるための「ポートフォリオ」に着目し、その活用可能性を検討する点にある。 初年度はまず、国内外において過去十数年間に出版された大学教育におけるポートフォリオに関連する論文等を対象に文献調査を行い、実践型学習において学生が省察的学習者であり続けることを促進する手段としてのポートフォリオのあり方を分析、展望した。 次に、上記の分析から得られた複数の視点をもとに、アートマネジメント教育におけるポートフォリオ導入の先進事例(ユトレヒト音楽院アートマネジメントコース)を対象に視察を行い、教員への聞き取り及び学生が制作したポートフォリオの分析を行った。その結果、同コースにおけるポートフォリオは、①「まずは自分自身を良く知れ」との教育理念のもと、②学生の公私にわたる日常の出来事を自らのキャリアに位置づけるための有効かつ重要な手段と位置づけられ、③学生が日常での経験を主体的かつ多角的に掘り下げて省察するための様々の技法を提供するものであり、④かかる省察の過程は学生によって可視化される一方、教師は学生の省察を教育的観点から深めるための促進者および指導者としての役割を担い、⑤ポートフォリオの構成上の特徴・工夫については、基本的な共通フォーマットを元に、学生の関心あるジャンルや目標の方向性に応じて分量やデザインをカスタマイズできる構成になっており、学生が主体的に制作に取り組みやすい設計がなされていることを明らかにした。 以上の作業を通じて、日本のアートマネジメント教育におけるポートフォリオの導入に向けた方向性を検討するための基盤を形成することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
○平成26年度に予定していた全国のアートマネジメント教育機関を対象とした郵送調査については、質問紙の作成に際して文献調査から判明した問題意識を反映しようとしたことにより、当初の想定よりも時間を要し、結果的に次年度に持ち越すことになった。 ○一方で、オランダでの現地調査では学生(過去の在学生)が制作したポートフォリオをまとまった形で入手することができ、9月の秋学期終了を待たずにポートフォリオの内容に関する分析に取りかかることが可能になった。
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Strategy for Future Research Activity |
○全国のアートマネジメント教育機関を対象に、学生に対する評価の現状と課題に関する質問紙調査を行う。 ○アートマネジメント教育におけるポートフォリオ導入の意義を実証的に把握するため、前年度に現地調査(ユトレヒト音楽院アートマネジメントコース)で入手した、学生が制作したポートフォリオの分析をさらに継続・発展させるとともに、同コース修了後にアートマネジメント分野において職についている卒業生を対象に聞き取り調査を行い、ポートフォリオの制作が在学中におけるキャリア意識の形成や目標設定、学習に対する自己評価においてどのように作用・貢献したかを把握する。 ○日本の大学教育においてポートフォリオを導入する際の手続的な課題を克服するために、視察を通じて、カリキュラム組み入れに際しての課題及び手法や、改善に向けた取り組み事例を把握し、日本のアートマネジメント教育におけるポートフォリオの応用可能性を検討する。
以上を踏まえて、日本のアートマネジメント教育において応用可能な「ポートフォリオを活用した学習評価システム」の提案を目指すこととする。
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